なんか、自分の小説って平坦なキャラばっかりになっちゃうな。
いまいち、複数のキャラクターを書き分けるイメージができない。
どうすれば、小説でもはっきり区別できる、力強いキャラクターが作れるだろう?
そんな疑問に答えていきます。
小説って文章主体なので、キャラクターの書き分けが他の媒体よりも難しいんですよね。ただただ物語に必要だから、でキャラクターを作ってしまうと、動かなくて辛い思いをします。しかも小説の進行中、ずっと。
そんな思いをしないためには、キャラクターがある程度、自分で考えて動くための基盤が整っている必要があります。
このブログの小説コラムでも色々なアプローチで書いていますが、動くキャラクターの条件は、『背景』と『行動』の2つの要素を網羅することです。
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小説におけるキャラクターの書き方は『こだわり』です
背景と言っても、必要なのはいわゆる『履歴書』のような内容ではありません。
キャラクターは『こだわり』で8割動く
ここで言う所の背景とは、『行動』のための背景。つまり、そのキャラクターが抱えている特徴的な出来事です。
ここにうんとフォーカスして考えると、キャラクターごとの書き分け方法が見えてきます。
小説の中でよく動くキャラクターというのは、強いこだわりを持っている場合が多いです。たとえばうんと人見知りだったとか、男嫌いだったとか、自分がとてつもなく好きだとか、そういった類の強い『こだわり』です。
思えば、自分が会う周囲の人も、多かれ少なかれ、それぞれ『こだわり』を持っていますよね。逆にこだわりが無い人が、それはそれで特徴的になってしまうくらいに。
Simon sinekという人がTEDスピーチで話しているんですが、「人は自分の信念に従って、それを証明するために行動します」というセリフがあり、全くその通りですね。人は自分の信念に従っていない行動や選択は取れないんです。
ということで、そのキャラクターの譲れない部分を見て行くと、それはこだわりだという事が分かります。その譲れない部分を中心に物語を作って行くと、勝手にキャラクターというのは動き始めます。
こだわりから『背景』を分析していく
その人の譲れない部分が見えてきたら、今度は「何故、その人はそんな部分にこだわっているのか?」という所を考えていくと、キャラクターが立体的になり始めます。
こだわっている、その理由の部分ですね。これは過去の歴史に分類される事なので、場合によっては本編に出て来ない内容の可能性もあります。
たとえば、身体を鍛える事に異様な程執着しているキャラクターは、過去に身体が弱かったとか。病院から一歩も出られなくて、またあの日々に戻る事に恐怖しているとか。
ようは、そんな話です。
ただし、こういった内容を追い掛けて行くと、だんだん「この人の過去も」「あの人の過去も」といった風に、色々な人物の背景を小説の中で語りたくなってきます。物語の構成上必要な場合はあっても良いんですが、なるべく必要時だけに絞りましょう。
登場人物の過去話はリアルのタイムラインが全く更新されないので、基本的に退屈です。可能な限り少ない方が良いし、早く終えた方が良いんです。
たとえば、主人公A氏の物語を追い掛けて行く時に、たとえ関連性があるからといって、いきなり村長B氏の過去話なんかが始まったら、誰も読みたくないですよね。
小説の本編に関係がある内容だったら良いんですが、そうではない内容は伏せましょう。
それでも、ふとした時に見えて来るセリフなどで、十分その人の人格というものは伝わって来るようにできますよ。
『背景』からの『行動』を模索すること
登場人物だって生きている訳ですから、物語の中で何も感じず、何も行動していない瞬間というのは多くありません。
つまり、大体のシーンで登場人物は、登場している間は何らかの事を感じ、何かを行動しているということです。
これは結構大事で、特に登場人物が多い小説でシーンごとに固まってしまうキャラクターが発生するのは、その人物の掘り下げができていない事が多いです。
そのため、各シーンごとに登場するすべてのキャラクターについて、『どんな事を考えて、何を行動するか』という事を最低限、決めておくようにしましょう。
行動することでキャラクターに感情が生まれますから、『背景』と『行動』さえきっちりしていれば、少なくとも平坦だとは感じなくなるはずです。
より実践的な小説キャラクターの書き方
ここでは基本を踏まえた上で、ひとつ上のステップに進んでみましょう。
小説には連続性がある事を把握する
すべてのキャラクターは、ひとつの小説の中で同じ時間を生きています。ここができているようで、意外とできていない事が多いです。
具体的に言うと、仮に5つのシーンがあった場合、以下のようになってしまうケースですね。
- シーン1:登場人物A、Bが参加
- シーン2:登場人物Aが参加
- シーン3:登場人物Aが参加
- シーン4:登場人物Aが参加
- シーン5:登場人物A、Bが参加
シーン5までの間、Bさんは何をしていたか? ということを、さわりだけでも考えておく必要があります。
そうしないと何だか急に時間が飛んだ人のようになってしまい、キャラクターの持つ現実味が一瞬にして失われてしまうというわけです。
また、その『シーン2~4の間でBは何をしていたか』といった事が次のシーンでは『背景』になるので、考えておくことでシーン5でBを活躍させる事も簡単になるというわけです。
突然登場したキャラクターが話を動かすのは基本NG
先程の話の続きになってしまうのですが、たとえばシーンの間が空いた後で、半ばお助けキャラ的に登場したキャラクターが問題を解決する。これは、きちんと背景が整っていて盛り上がる展開になれば良いんですけど、突然やってしまうと読者が冷める場合が多いです。
「期待していたのは、A氏の方の活躍だったのに……」となってしまうパターンですね。
これを避けるためには、手前のシーンで登場人物Bが後に現れるための布石を仕込んでおく必要がある、ということです。
別に手前のシーンの段階で「あとで助けるぞ~オウオウ」と見せて行く必要はないのですが、手前で(B氏が)行動していた内容が、後に助ける事に繋がったりすると、今度は逆に盛り上がったりします。
共感できないキャラクターには感情移入できない
このように全体を通して見て行くと、『背景』にせよ『行動』にせよ『連続性』にせよ、これってすべて、各キャラクターに共感するための下準備を予めしておきましょうね、という事だと思うんですね。
たとえば現実世界でも、全く知らない人から「ちょっと、相談事があって……」なんて言って話し始めたら警戒するというか、「ちょっと怪しいんじゃないかな、大丈夫かな」という感想を覚えると思います。
でも、常日頃からたとえば一緒に会社で仕事をしているとか、その人の人物像や背景、人格なんかが見えている状態で共感さえあれば、「ちょっと、相談事があって……」と言われても、いつでもウェルカムですよね。
受け入れられるキャラクターというのはつまり、それと同じ事が起こっているんです。
肝心なのは、小説が始まった段階ではどのキャラクターも皆一様に、『共感できていない』という所から始まるという事なんですよね。
これを克服するために、キャラクターのこだわりや行動を積極的に見せて行く事によって、キャラクターの背景を読者も考えられるようになり、『共感できるキャラクター』が生まれます。
もし良ければ、試してみてください。