何年かエンジニアをやってるけど、転職しようかと思ってる。
最近のIT業界って転職は当たり前だし、自分のスキルアップのためにも転職しないといけないと言われるけど、実際はどうなんだろう。
今、転職しても大丈夫?
そんな悩みを考察していきます。
エンジニアと人から呼ばれる職になって10年以上経ちますが、どうも若い人の間ではこんな話が出回っているようです。
先に概要からお話すると、確かにIT業界の転職というのは、昨今とても活発になってきたように思えますが、転職の意図を正しく理解しないと逆に辛くなるよ、というお話をしていきたいと思います。
ということで今回は、こんな人物像がターゲットです。
- 年齢は20代前半、社会人経験1~3年程度
- 今転職を考えている・転職したけどいまいち空気が合わない
- キャリアアップを考えているが、どう進めて行けば良いか分からない
転職する・しないは最終的には自分の判断になるので、『こうした方が良いよ』とは話しません。ただ、判断材料としては提供できると思いますので、そんな話をしていきます。
これから転職をしようと考えている若い方は、ぜひ読んで頂けたらと思います。
Contents
スポンサーリンク
『ITエンジニアの転職は当たり前』という言葉の裏にある誤解
『IT業界では転職が当たり前だから、転職はなるべく早く決めるべき。なぜなら若い方が有利だから』といったような話をよく聞きます。
結論から言うと、これは少し誤解を招く言葉だな、と感じています。
転職する必要があればするべきでしょうし、転職する必要がなければしないべきでしょう。
ただ、その『転職する・しない』という判断を、『周囲への不満』で決めてしまうのは良くないです。
たとえば、会社の空気が自分に合わないとか、上司がどうだとか、残業が多いとか。よく聞きますよね。
『IT業界では転職が当たり前』というのを、どうも『IT業界だから(誰でも)転職するのは当たり前』という風に誤解している方が、一定数いるようなのです。
ここの誤解を訂正するべく、この記事を書いています。
仕事は、『給料・残業時間』ではなく『プロジェクト』で捉えるべき
転職するかどうかで判断すべき要素は、たった1つ。『どちらの方が自分のスキルと経験に変換できる可能性が高いか』ここだけです。
そのために、仕事は給料や残業時間といったような副次的産物ではなく、『プロジェクト』という括りで捉えるべきです。
言い換えると、『自分が何をするか』ということです。
その会社で発足されるプロジェクトが、自分にとって価値のあるものであれば、給料や残業時間、人間関係といったしがらみにとらわれず、基本的にはやるべきです。
その会社で発足されるプロジェクトが、自分にとって価値のないものであれば、たとえどんなに人間関係が良く、給料が良く残業時間が少なかろうとも、基本的には転職した方が良いでしょう。
『基本的には』と書いたのは、その人の立場や状況、周囲が自分に与える影響によって、判断基準が変わってくるからです。
たとえば、どんなに価値のあるプロジェクトに関わっていたとしても、上司がものすごいパワハラで人を奴隷のように扱い、全くコミュニケーションすら取れないといった場合には、転職した方が良い事があります。
いや、もうこの場合は自分にとって『価値のないプロジェクト』になってしまうかもしれませんね。
では、どんな要素をもって、自分にとって価値があるかを判断すればいいのでしょうか。
これは前述した『スキルと経験に変換できるか』ですが、つまりそれは以下のようなことです。
- やったことがある内容か? 初めて挑戦するものか?
- 今の自分が抱えているスキルだけでは、到底できそうにないことか?
- 会社に関わったことのない他の人が見ても、称賛されるような内容か?
このあたりが判断材料になります。
私の場合は、最初に勤めた派遣系SEの仕事は試験業務が中心で、直属の上司から「基本的にはずっと試験作業をすることになる」と告げられた時に、転職を決意しました。
その時、「この会社はまだ安定しているから辞めない方が良い」とも止められましたが、はっきり意志を伝えて転職しました。
システム開発の試験業務しか引き受けられない人材には、どうしてもなりたくなかったのです。
『周囲への不満』はどこまで許容すべきか
よく聞くのは、「んー、仕事の内容が自分に合ってるかどうかは知らないけど、上司ウザいから転職したいんだよねー」といった類の話です。
その上司がどういった方なのかは、もちろん私には分からない部分です。ですが、上司がウザいから転職をしたとしても、次の上司が今より良いかどうかは分かりませんよね。
……と、こう書くと、「そんな事言ったら身動きが取れないじゃないか」と思う方もいるのではないかと思います。
上司への不満、自分の待遇への不満をまとめて、『周囲への不満』。
これは、人が集まって仕事をするサラリーマンという立場である以上、ある程度は許容すべきです。ある程度は。
では、これをどこまで許容すれば良いのかというと、『自分に実害があるかないか』で判断するというのがおすすめです。
たとえば、やたら高圧的で、上から目線でバンバンものを言う上司。部下としては従うしかなく、腹が立つ事もあるでしょう。
でも、仕事を円滑に進めることができて、自分のスキル・経験を上達させる上で障害にならないのなら、こういった発言はさらりと受け流して考えないようにするというのが良いです。
ただし、実害がある場合は別です。
ここで高圧的なだけではなく、暴力的だったり、本来はその人がやるべき単純作業を部下に任せて自分は何もしていなかったり、やたら飲みに誘われて仕事に集中できない環境が作られたり。
こうなってしまうと、もはや自分が仕事をしていく上で問題のある存在になってしまいますよね。
だからこの場合は、実害があるので転職するというわけです。
どうして実害がなければ転職しないべきかと言うと、その理由は『少なくともシステム開発は今の所、まだ複数人でチームを組んで行うものだから』です。
たとえば5人なんかでチームを組んでも、絶対に1人は出てくるんですよ、自分には少し合わないという人が。
5~10人のひとがいた時、そのすべての人が自分にとって1ミリも不満がない人の組み合わせになる事なんて、まずないと思いませんか。
だから、実害がなければ許容した方が、少なくともエンジニアとしては、自分にとって良い未来になるんです。
それが許容できないなら1人でビジネスをした方が良いし、会社で愚痴を言っていても時間を浪費するだけになってしまうので、得策ではありません。
転職が当たり前のIT業界で、どうキャリアを積み上げていくか
さて、前項までの内容である程度、どういった考えで転職するかしないかを判断すべきかという事がお伝えできたのではないかと思います。
でも、今の段階ではまだ『何をどうやって、キャリアを積み上げていく事を考えたら良いのか』という事に回答が用意できていませんよね。
システムエンジニアと呼ばれる職業で、一体最終的にはどこを目指したら良いのか。所謂『ゴール』の部分についてお話していければと思います。
最終的になるべきは、3つの要素と組み合わせ
色々な立場の職業がある中で、自分のキャリアを積み上げていきたい! と考える人も多いかと思います。
でも漠然と、『なんか凄腕のエンジニア』といったようなビジョンを掲げてみても、先には進めませんよね。
人間の時間は限られていますから、出せるパフォーマンスにはどうしても、限界があります。
先を見据えて力を蓄えていくなら、以下3点のどこを目指していくのか、または複数なのか、自分の方針を決めるべきです。
- 営業・マーケティング
- システム開発
- 特定技術のスペシャリスト
①の『営業・マーケティング』というのは、単なる営業活動には留まりません。
販売手法、効率の良い販売活動の追求に始まり、そもそもの話として『いかにして売れるシステムの企画を作るか』や、『販売流通ルートの確保・人員の調達』といった要素にも関わっていきます。
このようなエンジニアを、『セールスエンジニア』と呼びます。これは特に画期的な商品を抱えていて、販売を促進させたい企業に深く刺さります。
②の『システム開発』というのは、単にコードを書く人、プログラムをする人という事ではありません。
ある商品・サービスを開発したいと考えた時に、機器の選定に始まり、実際に設備を導入して使いこなし、その上でシステムを開発し、ゼロベースから商品を完成させる事ができる人のことです。
どうしてもシステム開発は1人ではできないものですが、『1~5年と長い時間を与えられれば、1人でも商品化できる』こういった人になることです。
③の『特定技術のスペシャリスト』は上記2つとは方向性が少し異なるもので、何か特定の技術にうんと長けた人になることです。
技術の世界は常に変化を続けていきますから、2020年6月現在で言うとAI・VR(AR)・クラウド・IoT・ブロックチェーンなどがかなり需要のある技術ですね。
別の方向性では、セキュリティに強いエンジニアも重宝されます。
そして、こういった事が学べる会社に所属するべきです。
変化に対応するキャリアを築いていく
技術の変化は本当に激しいもので、10年前に必要とされていたものが今はあまり需要がないという事が、めちゃくちゃよく起こります。
例に出すと、たとえば10年前って、VBなんかのアプリケーションを開発するエンジニアって、わりと仕事が沢山あったんですよ。でも今は、どんどんWebアプリケーションに置き換わっていますよね。
そういった変化に対応できず、エンジニアを辞めてしまった知り合いが本当に沢山います。
エンジニアとして需要がある存在になるためには、『変化していく』ということが非常に重要です。
このあたりは、特定の技術を一度覚えたらほぼ一生涯に渡って使えるといったような、他の専門職とは少し事情が違いますよね。
もちろん若いエンジニアを沢山採用したいものです。若い人は新しい技術を抵抗なく覚えていく事をしやすいですし、それはつまり、会社として『変化に対応していく手段』になっています。
でも、じゃあたとえば『C言語を深く扱う事ができて、現代の技術にも精通している』歴史あるシニアの方の採用先が無いかと言えば、そんなことはありません。
これが、『C言語を深く扱う事ができた』だけだと、転職先は少なくなるかもしれません(C言語なら、まだまだあると思います。VB6.0しか分かりません、とかだと少し厳しい)。
変化に対応できれば、キャリアは自然と積み上げられていきます。
IT業界に転職が多くても、『だから転職していい』という話ではない
私は会社で採用担当もやっているのですが、これは個人的な意見として、私は会社における若者の武器は3つだと思っています。
- 新しい技術や文化に精通しやすい
- ある程度年齢が離れていた方が指示を出しやすく、コミュニケーションが円滑になりやすい
- 年齢的に長く働けるので、最終的な価値を生みやすい
この3つは20代前半の今は強力な武器ですが、5~10年後はもう武器にはなりません。
『営業・マーケティング』『システム開発』『スペシャリスト』の、どれかに精通した成果が出ていなければ、転職は厳しくなっていきます。
そして、むやみに転職を繰り返すことで1つのプロジェクトを完遂する経験が積めず、エンジニアを辞めてしまう方が少なくありません。
だから、『IT業界の転職は当たり前』という事と、『だから自分も転職を繰り返していい』という事はひとくくりにして頂きたくないな、と思います。
マクロな世界とミクロな世界は、いつの時代も一致しないものです。