転職を考えているけど、あんまり資格を持っていないんだよね。
やっぱり、転職活動においては資格があった方が良いんだろうか。
今からでも資格を取りに行くべき?
そんな問題を解決します。
ITの世界には、実に様々な資格がありますよね。「私はLpicとORACLE MASTERの資格を持ってます!」なんて言うと、いかにも転職で有利そうに見えます。……がしかし、実際の所はどうなんでしょうか?
IT業界で10年以上働いております。転職活動を通じて気付きもありましたので、これから転職したいと考えている方に向けて、有益な情報を発信します。
ところで、転職に関する情報を発信している人達は、どうも『資格を取ったほうが良いグループ』と『資格は評価に繋がらないと考えているグループ』に分かれているようです。
この記事ではなるべく、どちらにも寄らないように、実際の体験に基づいたお話がしていければと考えております。
それでは、さっそく本編に進みましょう。
Contents
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IT転職に資格は本当に必要なのか
これ、先に結論からお話すると、転職活動において資格という側面を考えた場合、『実績がある人ほど効果は薄く』『未経験に近いほど効果が高い』ということになります。
つまり、転職活動で自分の実績を、どれだけアピールできるか。引き出しがあるか。
こう考えると、単にいるとかいらないとか、そんなにシンプルな話ではないようにも思えてきますね。
資格取得は、実積アピールで言うところの武器のひとつでしかありません。
私の場合、転職活動では資格以外に話せる話題がそれなりにあったので、特にアピールには困らなかったように思います。ただ、これはすごく、人によりますよね。
そこで、様々な方の立場に立った時、どう転職活動を有益に進めて行けば良いのか。
そんな視点を持って、話を進めてまいります。
全く実績がないか、極めてないに等しい場合
今、未経験かほぼそれに近い状態で、これからIT業界でやっていきたいと考えている方。この場合、資格はわりと有効に働く事が多いです。
実績がない状態では、とにかく業界経験を積まなければ上に行けません。たとえばソフトウェア開発系の会社である場合、仕様設計・開発・試験、すべてに関わった経験が実績です。
それらの実績がない状態ということですから、どこかで「自分はITの分野でやっていきたいですよー」というアピールができない事には、良い会社には就職できないでしょう。
ここで『良い会社』と書いたのは、IT業界の中でも待遇の良い会社と悪い会社があるからです。
IT業界には『IT土方』という言葉があるくらい、同じ業界内でも待遇の差が激しいです。
『IT業界は売り手市場で、システムエンジニアは引く手あまた』とも一部では言われますが、これは少し意味が違うように思います。
ここは私の体験に基づく見解ではありますが、『人材派遣系の下請け会社は人材が収益源なので引く手あまた』なのに対し、自社で商品・サービスを持っていて、その商品・サービスで収益構造を確立させている会社は基本的に『引く手あまた』ではないかなと。
そういった会社は高給で実務経験豊富なジェネラリスト・スペシャリストを雇い入れる事のみを行っており、実際の開発作業など、時間を使う作業は下請けの会社に任せている背景があります。
つまり、誰でもできる簡単な仕事になるほど待遇が悪く、特定の人にしかできない専門分野になるほど待遇が良くなるというわけです。
待遇というのは単に給料だけの話ではなく、残業時間が多い・休日出勤が多い、そのわりにスキルは身に付かずキャリアアップも考えられないといった事が挙げられます。
ここには、ホームページの華やかなイメージとはかけ離れた実態があります。ブラックです。
『未経験歓迎! 簡単なお仕事です』なんて文章をたまに目にしますが、誰でもできる簡単な仕事ほど、過酷な労働環境だということです。
だから、『キャリアアップ・スキルアップできる会社に所属している』というのは、IT業界で使い捨てのように扱われたくなければ必須の考え方なんです。
そういった会社に所属するために、会社に合わせた資格を取得するというのは、転職に有利に働く事は間違いないです。
実績がある場合
一方で、既にIT業界で何らかの経験をしており、実績がある場合ですね。この場合は、資格よりも実務経験の方が重要視される事が多いです。
と言っても、『実績』というものをどこに置くかによります。
実績と名の付くもので最もインパクトがあるのは、企業の利益に関係することです。
会社の仕組みを簡単にするシステムを自分の提案で開発したことで、社内の業務時間を1日あたりn時間削る事ができました。
まだ会社が挑戦していない商品開発について企画を出し、その企画を成功させた事によって年間でいくらの利益が入りました。
これらの経験は直接的に会社の利益に関係することで、特に後者は貴重な存在として扱われます。
資格というのはスキルの一部ですから、会社の利益に貢献するかどうかという視点で捉えてみると、より直接的な方が優遇されるのは明らかですよね。
一方で、間接的な利益に関係することです。
たとえば、プログラミング言語のPHPとJavaが扱えるだとか、MySQLの運用経験が何年だとか、そういったことです。
これらのスキルはもちろんあった方が良いのですが、利益に関係する実績を出している人と比べてみると、一見して見劣りしますよね。
『一見して』と書いたのは、技術には流行り廃りがあるので、たとえば人工知能やIoT、ブロックチェーンなどの技術に関係するスキルを持っていたりすると、優遇される可能性が高まります。
そして、間接的な利益に関係する内容は、それに応じたスペシャリストの資格を持っていた方が強いのは明らかです。
実務経験の上に乗るものであれば、より広範囲の知識を会得しているというアピールになるからです。
IT転職に必要な資格の取り方
さて、前項までの内容で、IT業界の転職における資格の立ち位置がなんとなーく把握できてきたのではないかなと思います。
もちろん、これはひとつの側面からのお話で、会社によって資格をどのくらい重要視するのか、自分がどういった資格を取りに行くのかで、それぞれ変わってきます。
なので、ここまでの内容はまず全体の概要みたいなものなんだ、というイメージを持って頂ければ、概ね外れないのではないかなと思います。
そしてここからは、より実践的な内容。つまりIT業界へ、もしくはIT業界内で転職をするにあたって、『資格を取る』という行動をどのように転職へ活用していけば良いのか、という話をしていきます。
この項を読むと、より資格に挑戦する意味を見出す事ができるのではないかなと。
それでは、内容に移りましょう。
入りたい会社が重要視している資格を取る
とりあえず資格を取ろうと思うと、大体順序というのは決まってきます。
まずITパスポートですね。これを取って、ビジネスマンとしての基礎を学びます。次に基本情報技術者です。ソフトウェア開発者としての基礎を学びます。
この2つが取れたら、応用情報技術者を受けて、そこから各種スペシャリストの資格を取りに行きます。
IPAの情報処理試験はこんな仕組みになっているので、ある程度ゲームっぽく資格に挑戦することができるようになっており、非常に参入障壁は低く、資格の数は多い。こんな感じになっています。
でも、ただ好きな資格にこうやって挑戦していくのは、あまり実践的ではないんですよね。
たとえば、「とりあえず基本情報技術者は取っておいて損はない」なんて言われます。私も持っています。
じゃあ、基本情報技術者を持っているからシステムエンジニアとしての基礎技術はOKかと言われると、そんな事は無いんですよ。
特にソフトウェア開発をすると決めた場合、基本情報技術者試験で学べる事は全体の一部です。
プログラム言語の実践的な問題は確かにあります。でもまあ当たり前なんですが、基礎的な部分に集中せざるを得ないんです。
システム開発を実際に1本やってみる事と比較した時、専門知識の面で敵いません。
だから、IT業界における資格というのはやっぱり、どうしてもサブの要素なんですね。それがないと仕事ができないという訳ではないんです。
それが分かっていると、転職で資格をどのように有効活用するかという事が決まってきます。
たとえば、AWSを利用したサービスを展開している会社に、AWS認定資格を持って参上する。こういう動き方が得です。
とりあえずIT業界に参入しているけど、試験作業ばっかりでスキルが上がらないから転職したい。仮にそんな状況だったとしたら、『とりあえず基本情報技術者を取る』というのは、あまり有効に働きません。
何故なら、基本情報技術者がなくても、実務経験があると書くことができるからです。基本情報技術者を持っているか実務経験があるかなら、まあ内容による事はありますが、基本的には実務経験の方が優先です。
業界ニーズにマッチした資格を取る
続いて、もう少しマクロな内容として、『業界ニーズにマッチした資格を取る』という考え方があります。
たとえば、インターネットセキュリティに関しての需要は、昨今の情報漏洩事件を見ていれば上昇傾向にあるのは明らかです。
そこに情報処理安全確保支援士を取って挑む、といった動き方をすることです。
セキュリティ・クラウドなどの技術は今が旬で、知っているだけ有利に転職を進める事が可能です。
どちらにも言えることは、『技術は、時間が経つと廃れる』ということです。
たとえば、『基本情報技術者試験』って最近ではもうエンジニアの登竜門のように扱われる事が多いですが、あれって昔は、『第二種情報処理技術者試験』という名前でした。
当時からすると試験の内容も、かなり大幅に変わっています。……そりゃそうですよね。技術の変化が激しすぎて、知識がどんどん入れ替わってしまっているんですから。
試験のために当時使われていた言語は、FORTRAN、ALGOL、COBOL、PL/I、アセンブラ言語。そして、途中からC言語が加わりました。
今、途中から加わったC言語でさえ、組める人がIT業界全体の中でどれだけ制限されていることか。
……と、このように、IT業界の資格というのは時間が経つと、他の資格に比べて鮮度が落ちてしまうスピードがとても速いんですね。
なので、『今転職をするために、必要な資格を取る』くらいの意識でいないと、技術がどんどん移り変わってしまって、気がついたら資格が転職の役に立たないという事になってしまいがちです。
私も資格に注力していたのが10年近く前の話なので、もう当時取った資格は今、転職の役には立っていませんでした。
0%か100%かで物事を見ないように注意しよう
ということで、『IT業界の転職における資格はどの程度有効か』という事について、実体験を混ぜながら話をしていきました。
まとめると、『未経験なら資格はある程度有効』、『実務経験は資格よりも重要視される』『実積があるなら資格が無くても大丈夫』ということでした。
この記事を書くにあたり、『IT業界の転職に資格は必要ない』、または『資格があると有効』といった記事を多数見かけたのですが、0%か100%かの平面的な要素として見ない方が最終的に有利だろうな、と思います。
自分の立ち位置と、入りたい会社の状況。その2つによって、資格が必要かどうかというのは変わってくると、そういう事なんですよね。
そうすると、『私は未経験から転職しようとしているから、ITパスポートだけでも取っておこうかな』とか、『ORACLE MASTER推奨ってなってるけど、Oracle実務5年以上やってるから資格なくても受かるかな』『でも資格とったら給料上がるから受けておこうかな』といった選択肢が広がるじゃないですか。
なので私は、転職先の会社を見て、資格を取るか決めるという事をおすすめします。
現場からは以上です。