どうしても、会話のシーンが長くなっちゃうのよね……。
どうすれば会話を連続させず、短くできるのかしら?
それか、長い会話でも変じゃないようにするとか……。
方法を教えて!
そんな悩みを解決します。
特に小説を書き始めてすぐの頃は、この『会話シーンの量・密度』がテンポ良くさばけず、困ってしまう事が多いですよね。
私も初めて書いた小説は、5割以上が会話でした。
Webに小説を公開し始めて6年ほど経ちますが、今では作風に合わせて会話のシーンの長さを調節しております。
というわけで今回は、『長い会話シーンをうまくさばく方法』ですね。ここに焦点を当てて、書いていければと思います。
慣れてくると感覚が掴めるようになると思いますので、まずはこの記事を読んで頂いて、実践してみて頂ければなと。
それでは、さっそく本編に進みましょう。
Contents
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小説の長い会話を扱う書き方・テクニック【読者に飽きさせない】
まず前提として、『長い会話が読者を飽きさせてしまう』という発想があると思うのですが。
あれって、『会話が長いから読者が飽きてしまう』という訳ではないんですよ。
『シーンの作り方に問題があるから、読者が飽きてしまう』というのが正しいです。
というのも、小説における会話の立ち位置って、ざっくり分けると以下の3種類があるんですよね。
- 目的を伴う会話(打合せなど)
- 目的を伴わない会話(日常会話など)
- 状況説明としての会話
まずこの3種類を識別して、自分が書こうとしている会話がどのジャンルに所属するのかという事を把握する必要があります。
なぜなら、それぞれで『読者が飽きてしまう』原因も変われば、対策も変わってくるからです。
それを念頭に置いた上で、以下を読んで頂ければと思います。
1.目的を伴う会話(打合せなど)
まず、目的を伴う会話ですね。
これはバリエーションがけっこう多岐にわたるもので、『打合せ・会議』といった長いものから、『共通の目的を持つ者と出会う』など、短いものまであります。
こういった状況で会話が必要になるのは主に、考えをまとめたいからです。これまでの状況を整理し、新しい意思決定をする。ここがポイントです。
たとえば、「右と左があるぞ! でも、さっき右に向かったメンバーと電話で連絡が取れない。……じゃあ、左に行くか」という感じです。
こういった会話で飽きてしまうのは、『目的がぶれている』という事がほとんどです。
現実世界でもありますよね。フリートークのように会議を進めた結果、一体何について議論しているのかが途中から分からなくなり、退屈な時間を過ごすという。
あれと同じことが、小説の中でも起きてしまっているのです。
大切なことは、『何を意思決定しようとしているか』を整理することです。
できれば、一行で書いて伝えられるものだと望ましい。現実でもそうしますからね。
まずは、何か意思決定しなければならない材料がありまして。
それに対して複数人でアイデアを出し合うとなれば、見ていてつまらないものにはならないでしょう。
2.目的を伴わない会話(日常会話など)
目的を伴わない会話というのは、人と人が出会う事によって自然と発生する会話のことです。
これは突き詰めると書くのが意外と難しく、悩む所でもあります。
まず『日常系』ってあるじゃないですか。あれってあんまり、本当の日常とは近くないんですよ。
日常でふと思い出して楽しむような出来事を、ずっと連続で発生させ続けるというジャンルなんですよね。
いわゆる『日常会話』のほとんどは、報告・連絡・相談です。
それ以外の会話、つまり『雑談』って、自分の身内で起きたちょっと笑える話なんかが該当するんですが、多くの場合は身内トーク、つまり『身内でしか楽しいと思えないもの』です。
それを、一般の読者にも楽しいと思ってもらえる形で書く。だから日常会話は難しいんです。
それでは何をしなければいけないかというと、それは『驚き』を混ぜることです。
面白い日常会話の多くは笑いが混ざっているものですが、笑いがどこから来るか、というのは未だはっきりとは解明されていません。
ドイツの哲学者イマヌエル・カントの、『笑いとは張り詰められていた予期が突如として無に変わることから起こる情緒である』というのが名言として残っています。
どの本だったか記事だったかも忘れてしまったのですが、『笑いは命の危険を伴わない驚きから来る』と表現されているものがあり、実際それを意識してみるとかなり改善されたので、私はここに気を付けています。
そういう意味では、『仮定が崩された』とも言い換えられるかもしれません。ある前提条件を意識させて、それを覆す。これを続けることです。
何気ない日常会話にこの要素を含めることで、大きく感想というのは変わって来ます。
3.状況説明としての会話
最後は、状況説明としての会話です。これはもうシンプルに、ただの説明ですね。
はっきり言って、これが一番の難敵です。
状況説明って、必ず退屈になるんですよね。何故なら、小説の読者はその状況の当事者ではないから。
歴史の教科書を読んで楽しいと思う人と、そうは思わない人が居ますよね。
あれは、その歴史を当事者だと思って見られるか、そうではないかという所に違いがあります。
同じ戦国時代でも、「いいくにつくろう鎌倉幕府」と語呂合わせで覚えていても、特に面白くはありませんよね(これ変わったんでしたね)。
でも、たとえば織田信長はその功績や戦いの記録などが多いので、取り扱っている作品も多く、こうなると一気に身近な人として感じられます。
つまり、状況説明としての会話を面白く読ませるコツは、『当事者要素を突っ込む』ということです。
単なる状況説明をやめてしまい、その場に起こっている出来事と連動するようにプロットを作っていく。これが大事です。
言葉だと分かりにくいので例を出すと、たとえば人間と悪魔が千年にわたり、争い続けていたとします。そうして、人間が滅んだとしましょう。
この背景で、小説の冒頭で「○○○○年、人類は滅びた」と説明を始めてしまうと、難しくなります。
こんな時は、登場人物の身近な要素に置き換えるとうまく行きます。たとえば、人類最後の生き残りである主人公が、悪魔から逃げている所から始まるとか。
発想の転換が必要なところで、できるだけ状況説明をしなくても良いようにプロットを組んでいくのが大切です。
会話が多くなってしまう小説への対策
さて、特に最初の頃は、小説というと会話ばかりになってしまって、地の文が全く書けなくなるという問題が発生しますよね。
その現象の対策をどうすれば良いのかというと、それは下記の2点です。
- 状況を詳しく書く
- ただの会話にしない
せっかくなので、このあたりもセットで覚えてしまいましょう。
1.状況を詳しく書く
まず会話のシーンで大切なことは、『状況を詳しく書く』ということです。
ついつい会話になってしまうと、何もかも忘れて登場人物同士の会話に集中しがちですが、小説はマンガではないので、会話だけでは一体何が起こっているのか分かりません。
たとえば、どこで、誰と、どのような会話をしているのか。
その台詞を受けて、登場人物の表情がどう変化したか。
その辺りも、文章にしなければ想像で補うしかなくなってしまうんです。
でもこれは裁量次第なところがあり、何でもかんでも説明していると、今度は『状況説明としての地の文』が増えすぎて、逆にテンポが悪くなってしまいます。
そこでおすすめは、スポットを当てている登場人物に絞り、その登場人物が見ているものや意識しているものについてのみ、状況説明をすることです。
こうすると、比較的自然なカメラワークになり(カメラなんかありませんが)、読者もすんなりと受け入れる事ができるようになります。
2.ただの会話にしない
2つ目は根本的な対策で、『そもそもただの会話にしない』という方法があります。
ただ立ち尽くして会話をしている状況というのは、実はあんまりないですよね。
何かの作業をしている最中であったり、どこかに向かっている中だったりします。
現実世界と同じことを、同じように小説にも当てはめてあげることで、無理なく長い会話を表現することができるようになります。
これには別の利点もあり、何らかの行動をしながら会話しているので、会話の途中で何かに気付いたり、別の要素が現れたりといった『状況の変化』も作り出す事ができます。
日常会話の中でも、たとえばコーヒーを淹れながら会話をするとか、出かける準備をするとか。工夫のし所はありますね。
こういった知識を総動員することで、『退屈な会話』を少しでも減らしていく意識が大切です。
小説において、長い会話は潰せない
ここまで、『長い会話をうまく見せるテクニック』について書いてきました。
このあたりは私が常日頃から実践している内容でもあり、即時性が高いと思います。
覚えて使うだけで、今日から内容ががらりと変わる事も少なくないのではないでしょうか。
このあたりは、ぜひ実践してみて頂きたいなと。
ところで、そもそも小説内で「長い会話をなくしたい」という相談を受けた事もあるんですが、これは意識しなくて良いかなと思います。
小説である以上、現実世界と同じように長い会話って存在するものですし、それで会話文が増えてしまうことは、別に恥でもなんでもないです。
大切なことは、地の文であろうが会話であろうが、読者を飽きさせない事であり、そこのみにフォーカスしていくと、いずれ違いが出てくるのではないかなと、私は考えています。
それでは、今回はこんなところで。