こんなに個性的で大好きなオリジナルキャラがいるのに、何故か小説だと動いてくれない。
頭の中では話が組み上がっているはずなのに、何故か書く段階になると手が止まってしまう。
一体どうしたらいいんだ……
小説を書き慣れていないうちは、よくこういった問題に陥ってしまいがちですよね。
頭の中で考えていることを文章として紙に書き出すというのは、実は自分が思っているよりも難しいです。
自分が「このくらいは小説を書けるだろうな」と思っているレベルの、軽く十倍くらいは書けていない前提でいた方が、気が楽だなというくらいです。
とはいえ、できれば頭の中に描いている事だけでも、確かな形にしてみたいものですよね。
そこでこの記事では、私が初心者の時に教えてほしかった、小説における最も基本的な知識について書いていきます。
いわば、小説のコツ。卵かけご飯における卵と醤油です。
最初に言っておくと、これを読んで、真似して欲しいという事ではありません。
こういった知識は、人によって合う・合わないがかなり明確に分かれることも承知の上です。
あなたにとって『使える部分があった』そう感じていただけたなら、これ以上のことはありません。
それでは早速、秘伝のタレを公開していきましょう。
Contents
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良い小説と思われる書き方のコツは、『問題解決』だ。
いきなり何を言い出すかと思われるかもしれませんが、小説というのはほとんどの場合、問題提起から解決までをストーリー仕立てにして表現したものです。
そうではないものも、もちろんあります。ですが大切なのは、そうであるもの・そうではないものを、見極めるという視点です。
小説は、『問題解決』をストーリーにした作品です。
こう考えると、最初のきっかけが生まれます。
よくありがちな、「私はもうほんまマジで魅力的な登場人物を考えたのに、それが何故か話にできない」というつまづきポイントの原因がコレです。
狙って作らなければ、登場人物は解決するべき『問題』を抱えていません。
問題を抱えておらず、結果としてそれが問題なのです。うまい事言った。
たとえば女性主人公の恋愛小説では、彼氏のいない主人公が最高の彼氏と付き合うまでの『問題』を解決したりしますよね。
みんな知ってる少年漫画では、大切なものを奪われた主人公が強くなって、失ったものを取り戻すまでの『問題』を解決したりします。
キャラクターは、どちらかと言うとその後でも遅くはありません。
まず問題を作りましょう。話はそれからです。
問題が作れたら、必要なシーンを列挙してみよう
話の主軸となる問題点を決めたら、次はその問題を解決するまでの流れを決めましょう。
最低でも以下の3つはシーンが必要になるはずです。
小説を書くための最短シーン
- 問題が起こる
- 解決のために行動を起こす
- 問題が解決する
結論から言ってしまえば、このシーン数をどこまで細分化するかによって、物語の長さが決まります。
だから長い話を作りたければ、問題を複雑にして、かかわる登場人物を増やしてあげれば良いんです。
なので、必然的に登場人物が増えれば増えるほど、物語というのは長くなります。
つまり逆に言えば、初心者が短編で一本書こうと思ったら、登場人物をなるべく絞るという作戦は有効に働きます。
核になる問題は必ずひとつ必要ですが、たとえば「トラップカード発動!」みたいな感じで、複合して問題を起こしてもOKです。その場合も話は長くなる傾向にありますね。
と言っても、どこでシーンを区切れば良いのか分からなくなってしまいますよね。
慣れないうちは、問題定義から解決までが1シーンだと思ってしまう事も少なくありません。
そこで、ひとつコツをご紹介したいと思います。
それは『登場人物の感情に変化がある所までを1シーンにする』ことです。
何らかの行動を起こした後って、かならず結果が得られますよね。
その結果に一喜一憂するわけです。この変化までが、ひとつの括りです。
登場人物の気持ちにどんな変化を起こしたいか? 今の段階ではラフで良いので、さらっと書いてしまいましょう。
これが『プロット』の原型となります。
ポイント
『起承転結と序破急、どっちで書くべき?』
上記で最低のシーン数が3になるという事が分かっていれば、特にどちらも意識しなくて大丈夫です。
メモを書くときに、ノートが良いか付箋が良いか~というようなもので、起承転結を意識した事で話が整理され、面白くなる可能性はありますが、面白い小説が必ずしも起承転結で書かれているとは限りません。
勿論、「私は○○の方が得意」というのがあれば、どちらかに絞っても良いでしょう。
小説内の各シーンに『ヒストリー』と『トリガー』を用意する
これは小説の書き方ではあまり見ないですね。私は名前も覚えていませんが、古い舞台脚本のハウツー本で読んで、それを自分なりに解釈しました。
作ったシーンで起こしたい気持ちの変化を書き留めたら、今度はその変化を『ヒストリー』と『トリガー』、ふたつの観点から探って行きましょう。
ポイント
『ヒストリー』
なぜ、その気持ちの変化が起こったのか? その『背景』のこと
『トリガー』
どんなきっかけで気持ちの変化が起こるか? その『引き金』のこと
ヒストリーは、意識せずとも作られている事が多いです。
シーンを作った。なぜそうなるか? 何故ならこれこれこういう過去があって、この登場人物はこんな事で苦しめられていたからだ!
でも重要なのは、これってあくまで『背景』だという事なんです。
その時点での今現在にフォーカスする必要があります。
ちょっと難しいので、ひとつ例を示しますね。
いじめられているA君が、様々な苦難の末、ついにいじめているB君に復讐する事を腹に決める。
うーん、あんまり穏やかではありませんが、たとえばそんなシーンを連想したとします。
『様々な苦難の末』ここは、『ヒストリー』の部分です。A君がB君に復讐するための背景です。
でも、人は背景だけがあっても行動には移りません。ここがポイントです。
トリガーがなければ、「あいつ、ほんとやめて欲しいなあ……」と愚痴って終わりでしょう。
でもたとえば、今までにないほどにひどい仕打ちを受けたら……? 都合よくそこに、ナイフが転がっていたら……?
これが、『トリガー』です。
A君が行動に移すためには、そのシーン内でリアルタイムに起こっている出来事に注視する必要があるんです。
何故なら、この一文の背景には、『様々な苦難を受けてきたが、結局の所はこれまで復讐してこなかった』という相反する事実があるからなんです。
下記が混在している状況ということです。
(いじめられるのはもう嫌だ!)
(……それでも、これまでは耐えてきた)
行動するためにはきっかけが必要です。
これが決まっていないと、シーンが嘘っぽくなってしまったり、なぜか説得力がなくなったり、「なんか期待してたのと違うな……」と思われてしまったりします。
作者にも読者にも説明のできない気持ちの悪さを無くすための、最大のコツがここにあります。
もちろん背景、パーソナルヒストリーもとっても大事です。ですが、実は同じくらい各シーンのトリガーを明確にする事が大事です。
人は何らかの行動を起こす時には、必ずきっかけ、つまり『トリガー』が必要になります。
背景がなくてもOK! という事ではなくて、両方必要だという事なんです。
さらには、それぞれのシーンにどちらがあってどちらが無いのか、それを見極める目も重要です。
自分の書きたい各シーンを攻略するにあたり、この2つの視点を知っているのと知らないのとでは天と地ほどの差が出ます。
ここを覚えておきましょう!
小説における、魅力的なキャラと世界観とは
まず、登場人物からいきましょう。
魅力的な登場人物というのはどんな存在か? ここを掘り下げるのがポイントです。
周囲の魅力的な人は、どんな存在でしょうか? そこを考えてみると、自ずと解は見つかります。
こちらも結論からいくと、初心者が迷ったらまず実践して頂きたいのが、『こだわりを持った登場人物を作る』ということです。
『俺の書いた小説の主人公は最強チート級の闇の剣の使い手で、魔法はメタリックハリケーンでもうなんかめっちゃ強くて、特技は2000個使えて第三の目を持ってて、必殺の魔眼で相手を圧殺して世界最強の存在である唯一無二の竜王を1000匹倒した』
いやまあ勿論そんな要素があっても良いんですが、そうではなくこだわりと言うのは、生き方に由来する部分です。ポリシーです。
これをある程度強調すると、メリハリのある登場人物ができて掛け合いが気持ち良くなります。
言わば、異なるジャンルの専門家同士の対談ということです。
『この登場人物はとにかく人に近寄られるのが駄目で、仲良くされると萎縮してしまう』
『この登場人物は自分で判断する事を何よりも大事にしているから、人に流されて意見を決める事は絶対にない』
そういった性格的な要素がハッキリしていると、登場人物ごとの相性も分かってきますし、話も作りやすいです。
次に世界観は、作った物語の延長線上にあると考えましょう。
問題点があってシーンがあって登場人物が決まって、ある程度自分の見せたいものが決まってきたら、ここで初めて世界観について考えます。
これらの物語を最もよく見せられる世界はどんなものかを考えると、比較的スベらない世界を作る事が可能です(なお、私は数ある小説の技術の中でもここが最も苦手です)
ただし、物語が完全ファンタジーだからといって、世界観まで必ずファンタジーにしなければならないかと考えると、実はそうでもありません。現代ファンタジーというものもある事ですし。
物語の舞台が問題点と密接に関わっている事も多々ありますが、そうでない場合はなるべく登場人物の掛け合いが発展できそうな世界にするという作戦もあります。
このバランスのとり方は人それぞれですね。
やってしまいがちなのは、最初に思い付いたからといって、世界観からまず作ってしまい、そこから話を連想しようという作戦です。これはうまくいかない事が多いです。
世界観が物語の発想を邪魔してしまって、先に進めないという事が稀によく起こります。(リメイクが難しいのはここだなあと、最近真面目に思います)
小説内のシーンすべてを面白くするために必要なポイント
さて、一通り書き出す事ができたら、各シーンごとに以下の点について再度チェックを行いましょう。
とは言っても、これは初心者向けですから、気にすべき事はたった3つです。
- 物語の向かうべき問題点がはっきりしている(立ち止まっていない)
- 登場人物の気持ちの変化がある
- 『ヒストリー』と『トリガー』が明確
ここまで考えれば、どのシーンでどんな会話や行動が繰り広げられるのか、ある程度は形になっているのではないでしょうか。
突き詰めると、プロットと実際に書き起こした文章との間で差異というものは生まれなくなってきます。
差が生まれてしまうということは、ここまで考えてきた事のどこかに穴がある場合が多いです。
よく、『プロットを立てても登場人物はその上を行くので、あくまで下書き程度に留めるべき』という意見がありますが、そういう方は逆に、あまり細かくプロットを立てなくても進められる方なんだろうなあ、と思います。
ただ、私のようにそういったセンスを持っていない人間は、プロットを立てていない部分から作品が崩壊します。これは間違いない。
プロットは登場人物の行動を縛るものではなくて、むしろ発想を広げるツールとして使うのが最も有効です。
ここで、「なんだよ結局センスかよ」と思う方も居るかもしれません。
でも大丈夫です。ちゃんとプロットを書けば、普通に自分が目標にしているものは書けます。
『ヒストリー』と『トリガー』の関係性が分かっていれば、決してご都合主義ではない、生きた登場人物の姿を描く事ができます。
『どういう歴史があって、どういうきっかけがあってこの行動を起こすのか』が明確だと、登場人物は一人で走り出します。しかもプロット通りに。
行動の理由と気持ちの変化がシンプルで分かりやすいものほど、広く読者に刺さるという事もありますね。
できるだけシンプルに面白いと思えるシーンの集合体をつくりましょう!
小説の書き方には、コツがある。
今回の記事で出てきた事をまとめると、以下のようになります。
小説の書き方まとめ
- 核となる問題点を作る。
- 問題を解決させるためのシーン数を決める。
- 各シーンに『ヒストリー』と『トリガー』を作成する。
- 登場人物にはこだわりを作る。
- 世界観は上記4要素を魅力的に引き立てられるものにする。
- すべてのシーンを面白くする事を意識しながら書く。
これらを網羅するようにプロット=設計図を組み立てる事で、どんな初心者でも基本を押さえた、面白い小説が書けるようになります。
小説における定番の面白さというのは、やはり魅力的な問題解決だからです。
ミステリーも恋愛もファンタジーも、多くが魅力的な問題解決に焦点を当てています。
これから小説を書きたい! と思っている方は、どうぞ迷う事なく、この指針を基にお話を作ってみてはいかがでしょうか。
細かい事は知らないままでも、それなりに筋の通ったお話になりますよ。
難しい技術や作法を覚えていくのは、それからでも遅くは無いはずだと、私は考えます。モチベーション下がったら意味ないですからね。
一人でも多くの方が、自分の思う物語を最高の形でアウトプットできる事を願っております。