今はとある会社で営業をやっているんだけど、ITの方が最近は伸びているし、IT営業に転職しようかなーと思っています。
でも、IT業界の営業と他の営業では何か違うのかな? そのあたりを教えてほしい。
とあるベンチャー企業でシステム開発をしながら、営業もやっています。そんな疑問に答えていきます。
このあいだ、とある営業さんとお話をしたのですが、IT業界における営業さんと他の商品を販売している営業さんは、本質的には同じながらも似ているようで似ていない、そんな違いがあると感じました。
そこでこの記事では、『IT業界で営業に求められること』という題材で記事を書いていきます。
私自身、ここには中々に難しいジレンマがあると感じており、社内で営業についての教育を行うたび、悩まされております。
この記事が少しでも皆さんの助けになればと思うばかりです。
Contents
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IT営業に転職した時、周囲から求められること【克服しよう】
まず、IT業界の営業職はあんまり営業していません。どちらかと言えば、コンサルに近いです。
お客様が問題視している事を適切に汲み上げ、それを解決するためのプランを作ってあげる仕事が中心で、自社の商品を売るというのはどちらかと言うと、そのプランの結果として行われるものです。
それはもちろん『積極的に売らなくてもいい』という事ではないものです。
しかし、顧客の問題を解決しに向かっているという意識がないと、結局相手からすると押し売りのように捉えられてしまうこともしばしばで、コミュニケーションが成立しないという問題が発生します。
そんな、IT営業の難しさをお話していきます。
お客様は『何が欲しいのか』を分かっていない
『IT営業はコンサルに近い』と称するところの根本的な問題がここにあります。
たとえば保険なら、商品の形がはっきりしていますよね。「そろそろ生命保険に入っておいた方がいいかな」なんて、よくある話ではないでしょうか。
そこに、保険の商品について細かい事を説明してあげることで、検討に入ります。
基本的には、何でもそうです。広告代理店は広告を売りますし、百貨店の店員は雑貨を売ります。
ところが、IT業界の商品は携帯電話などのハードが付属するものでない時、実体が無い事があります。
システムの内容は、言葉で説明するしかありません。ひと目でそれと分かる商品が無い場合があるんです。
すると、お客様の目から見ると、「うーん……うちはこんな問題を解決する手段が欲しいんだけど……これでいいのか……?」と、疑問を抱えた状態で問い合わせしてくるという現象が起こります。
ここに、『IT営業=コンサル』という図式が成り立ちます。
お客様のニーズは『商品』というよりも、『問題解決』ということです。問題解決ができない商品には、もちろん手を出したくはないんですよね。
もしかしたら、自社の商品だけでは駄目でも、他の商品を組み合わせたら達成できることかもしれない。
生の調査データが出力できるのだったら、エクセルで集計すれば解決するかもしれない。
まあ現実はこんなに単純ではありませんが、こういった要素が少なからず出てきます。
こういった問題を解決していくことが、最終的には自社の商品を売ることにも繋がっていきます。
技術と営業の間で揺れるジレンマ
こういった背景があると、営業と言っても、少なからず技術の事を学ぶ必要が出てきます。
つまり、『お客様が問題視している事は何か?』という事をクリアにするということです。
これにはコミュニケーション能力ももちろん必要になりますが、相手の技術レベルに合わせて技術の話ができるだけのスキル、これから開発する内容の予算を概算でもある程度提案する能力などが必要不可欠になってきます。
しかし、純粋なシステム開発能力は、どうしても開発をやっている人たちには中々敵いません。
ここに、『IT営業』のジレンマがあると、私は思っています。
営業に注視して顧客を開拓する事を意識しすぎれば、変化し続ける自社の商品を把握することが難しくなっていき……。
自社の商品を把握・理解する事に時間をかけすぎると、営業として成果が上がらない状態になってしまう……。
このあたりの知識をバランス良く仕入れて活用できることが、IT営業としての手腕にかかってくるかなと。
ただ、簡潔にこう言ってみると、『商品をよく知り、伝わりやすい形で提案する』という営業本来の目的と何ら変わらないという事はある訳です。
しかし、ここにIT営業ならではの『お客様の立ち位置が遠い』という問題が組み合わさるので、解決が難しくなってくるのだと私は認識しています。
これが、『本質的には同じなんだけれども、似ているようで似ていない』の意味になります。
もしこれから、IT営業に転職するなら
もしも現在IT営業未経験の方で、これからIT系の営業に転職することを考えているなら、意識しておいて頂きたい項目が2点あります。
- 押し売りにならないこと
- 顧客に最も近い、操作に関わる事だけでも把握すること
もちろん、技術の事は理解していれば理解しているほど良く、直接的な武器になります。私はシステム開発を管理する立場で営業もやっているので、この部分の強さがとてもよく分かります。
しかし一方で、経験が浅いほど、完璧に商品の構造から詳細部分までを理解した上で営業に挑むというのは、中々できる事ではないとも考えています。
そこで、最低限ここさえ抑えておけば、IT営業としてのスタートラインには立てるはずだと思い、これを提案させて頂きます。
1.押し売りにならないこと
まずは、『押し売りにならないこと』です。
これを聞くと、「なんだ、そんなことか」と考える方も居るとは思いますが、ITにおける『押し売り』というのは、思ったよりも範囲が広いものです。
こちらが押し売りだと認識していなくても、お客様はそう考えている事があります。
なぜこういった認識の違いが発生してしまうのかというと、『お客様は分からない事は分からない』からです。
IT系の(特にソフトウェア系の)商品に関するメリット部分というのは、思った以上に理解されません。
直感的に理解できないからだと私は想像しています。
「こういった所に、他社にはない魅力があります」「弊社の商品にはこういった強みがあります」と説明しても、「なんか使えそうだけどよく分からない」の範囲を出ないんです。
それが、最終的には「そんなに押し売りみたいに勧められても、こちらは判断できませんよ」という評価に繋がる事があります。
これは私が実際に経験したことです。
これに対しての対策は、まずお客様のITへの理解度を探る所から始め、問題解決をする形で一歩ずつ紐解いていくことです。
つまり、相手に対して必ず同じ出方をするような、テンプレート的な営業はあまり通用しない事が多いです。
商品のタイプにもよることは理解していますが、こういった現象は起こりやすいと考えています。
2.顧客に最も近い、操作に関わる事だけでも把握すること
IT営業という立場で会社に関わった時、技術的な内容を抑えておく必要はあるけれど、変わりゆく技術面のすべてを一人で完全に把握することは難しい、という話をしました。
そのひとつの対策として、『せめて顧客に最も近い事だけでも把握しておく』、これが大事です。
たとえば、私の会社でシステム開発をやっておらず、営業として最も良い成績をあげていた方は、技術的な詳細部分については把握しておりませんでした。
その代わり、顧客が操作する通りにシステムを使いこなし、『こういった問題が発生した場合は、こういった解決方法がある』ということを何通りもシミュレーションして、ある程度の問題には答えられるようにしていました。
表面上の使い方に関する部分だけではなく、他社のシステムも組み合わせた場合の挙動、お客様側でシステムの連携部分を開発するなら何を選ぶのがメジャーかなど、かなり広範囲にわたって調査をしていました。
結果として、お客様から信頼と高評価を勝ち取っていました。
実際に商品を利用するのは、営業である我々よりも知識がない人たちです。
そういった人たちに喜ばれる営業の仕方は、何も技術に明るい所だけが終着点ではないのかもしれません。
私はこの事が分かった時、少し救われました。当時の私は、自分が開発したシステムのすべてを人に伝えなければ、本当に成果を上げる営業に育てる事はできないと考えていたからです。
『最も顧客に近い立場』としては、システム開発をしている人間以上に語れる部分がきっとあります。
そんなマインドで、挑んで頂ければ幸いです。
IT営業は、技術と顧客を繋ぐコネクター
この記事を書いていて、私自身もIT営業の難しさというものを再認識できたように思います。
ある側面として、IT営業には『技術的に話したら簡単だが伝わりにくい内容』を、『専門用語を用いずに知識のない顧客に説明する』という難しい変換が必要なシーンがあります。
ここもまた、IT営業の知識と経験が求められる所であり、一朝一夕ではいかないだろうなというのが個人的な思いです。
それでも、誰でも最初からは、自社の商品に100%明るい営業にはなれないものです。
技術と顧客を結ぶコネクターのような役割として、ある意味顧客と一緒になって問題解決をする営業がいたら、それはお客様からしてみれば、とても心強い事だと思います。
私も、そんな存在を目指してこれからもやっていきます。
それでは。