IT業界でも、中小企業で働きたい!
色々な業界を経験した方が成長するだろうし、将来にも繋がるんじゃないかな。
よーし、大企業はターゲットから外して、中小の派遣・客先常駐型の会社に行こう!
上記は私が初めてIT業界に就職した時、思っていた事です。
当時の私に伝えたい大切なことは、『なんとなくのイメージだけで会社の仕事内容を判断しない方が良い』ということです。
とくに社会人になる前などは、会社とはどんな場所かという所を把握していない事が多いため、『経営理念』や『熱いメッセージ』などに惹かれて就職先を決めてしまいがちです。
もちろんそれらも重要なポイントではあると思うのですが、何より先に意識して頂きたいのは『仕事内容』だと思い、今回こういった記事を書きました。
そこで、中小企業を選びたいと考えている方に向けて、『こんな所に意識しておくと得』というポイントをお話できればと思います。
中小IT企業に転職しよう! と考えている方の参考になれば幸いです。
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IT業界の就職で中小企業を選ぶ時に気を付けておきたいポイント
IT系の中小企業を選ぶにあたり『どんなジャンルの中小企業に入るか』というのは、言わずもがな、かなり大きなポイントです。
でも、何らかの視点が定まっていないと、中々選ぶのは難しいものです。
そこで、こと『仕事内容』という観点から見ると、大きく以下のグループに分ける事ができます。
- 商品・サービスの開発系
- 専門スキルを持ったコンサルティング系
- 人材派遣・出向系
まず、上記のどこを狙うかを意識しておくのが大切です。
仕事内容がこれによって大きく変わりますので。
ここが注意なのですが、特に就職先の仕事内容について意識していない場合、就職活動で初めて目に飛び込んで来るワードは『給料』『休日制度』『残業時間』『賞与体制』なんかだったりするわけです。
こんな事ばかりを意識してしまうと、その会社の実態ってどんどん見えなくなってしまうんですよね。
そこで、それぞれの会社が持つ特徴を書いていきます。
1.商品・サービスの開発系
基本的に、売り出す商品・サービスが決まっている会社というのは、学べる事が多いです。
これは、『ジェネラリスト』を目指すためのルートと言っても過言ではないでしょう。
商品を売っている中小企業は、その商品を作るための方法を知っており、インフラからサービス公開まですべてを自分たちで行う術を持っています。
もしくは、必要な技術を外部に頼る術を持っています。
そのため、そういった会社で商品について詳しく勉強していけば、『少なくともその商品なら作ることができる』という人が誕生します。
ある商品を作ることができるのなら、類似する別の商品を作ることもできます。
これが、『ジェネラリスト』が育成される所以です。
大企業では商品の一部にしか携われなかったことが、中小企業だと大部分を自分の手で開発することができたりもします。
このあたりは、中小企業ならではの強みと言っても良いかもしれませんね。
大切なことは、その商品の内側ができるだけ見られるように仕事していくことです。
言われた通りに仕事をするだけでは、任される仕事は些細なものになるでしょう。
積極的に新しいサービスや追加のオプションなど、商品にまつわるアイデアを出していくことが大事です。
社員数の少ない中小企業では、そういったアイデアを出せる人は貴重だと思われる事が多いですし、自分のためにもなります。
ただし、競合商品を大企業に作られシェアを奪われて業績が悪化したり、商品の人気が無くなってしまうと、キャッシュが回らなくなって一気に会社が倒産したりという危険を持っています。
もちろん大企業だって経営不振になる時はなりますし、中小企業だけに限った話ではありません。
ですが、売り物が『商品・サービス』である以上は、それが廃れるとどうにもならなくなるので、安定を目指すなら需要が長期間見込める事業を選ぶべきです。
2.専門スキルを持ったコンサルティング系
『特定のスキルに特化した会社』は、その技術に精通したスペシャリストが集まります。
商品を持たない場合、そういった会社は専門スキルによるコンサルティング・業務請負をメインにした仕事を行っている場合が多いです。
これは、『専門家』を目指すためのルートです。
商品を作っている中小企業は、『商品を売るのが最終目標』という都合上ジェネラリストが集まる事が多いので、『何かひとつの分野に特化した人材』というのは生まれにくいです。
対して、たとえば『セキュリティ特化のコンサルティングを行う会社』など、『これをやる』と決まっている会社は、その道の専門家が続々と集まってきます。
こういった会社は商品そのものよりも、情報やコンサルティングを売り物にしている事が多いのですが、専門性があるので他の会社から重宝されます。
学習意欲の高い人が集まっており、他社にスキルの高さをアピールするため資格を積極的に取るよう推奨している事も多く、自分自身の『形になる』アピールポイントが増えていきます。
ただし、勉強していく幅が狭くなるといっても、勉強量が減る訳ではありません。
また、需要がなくなれば仕事もなくなるので、ある程度長く続けられそうで、発展性があり、広くニーズがありそうなスキルを選ぶ方が強いです。
さらっと出しましたが、『セキュリティ』なんかは需要が途絶える事がほぼないので、強いスキルのひとつですね。私も意識して勉強を続けております。
3.人材派遣・出向系
様々な会社を飛び回る、『人材派遣・出向系』は、手っ取り早くビジネスマンの基礎を固めたい人に向いています。
何しろ様々な仕事に携わるので、その中で様々な人に出会い、コミュニケーション能力が磨かれていきます。
一見すると『ジェネラリスト』育成ルートのように思えますが、実はそうではない可能性があることは、注意して頂きたいです。
もし専門スキルがあれば『コンサルティング系』に分類しますので、私がここで書いている『人材派遣・出向』は、『希少なスキルを持たず、他社から人件費を頂き、それを利益の中心にする会社』をさしています。
これは、次々に出会う新しい人とうまく連携する力を育てる、どちらかと言えば『セールスエンジニア』に近い存在へと向かうためのルートです。
私はこのあたりを理解していなかったので、「様々なシステムに関われるのだから、技術スキルも成長していくはずだ」と思っていました。
それはある意味では正解で、ある意味では失敗でした。
ここは話すと長くなるので、大項目として書きます。
人材派遣の中小企業では、技術スキルは育たないのか?
さて、『人材派遣・出向系は、セールスエンジニアを目指すためのルートだ』というお話をしました。
これは、まだ学生で仕事のイメージが漠然としている方からすると、驚く内容になるかもしれません。
もちろん、派遣・出向型の企業が悪いという事はなく、そこで成長できる事も沢山あります。
しかし、総合すると技術力を試されるような機会は、それほど多くは訪れないという側面があることは、覚えておくと有利かもしれません。
そこには、『元請け』と『下請け』という、難しい関係があるからです。
『元請け』『下請け』の実態
ご存知の方はご存知かと思いますが、日本のIT業界というのは『多重下請け構造』な事が多く、足りない人材を別の会社へ、別の会社へと伝って補う形が一般的です。
そのため同じプロジェクトに参加する人であっても、実は違う会社から来た人だった、という事があります。
同じ仕事、同じ勤務体制であっても、会社が違うので給与体系は違います。
この『呼ばれる側』が、『派遣・出向型企業』のビジネスマンたちです。
派遣・出向して客先の会社に行くと、多くの場合はそこで働くエンジニアの一部として混ざり、仕事を請け負う事になります。
そして、その仕事が終わればまた、別のチームに配属される。これを繰り返すので、コミュニケーション能力が上がるというわけです。
うまく連携できないと、次から使ってもらえる可能性が下がってしまいますから。
話を先に進める力・会議をうまく整理する力など、配属されるたびに違う人達と行う訳ですから、目に見えない部分のスキルは着実に向上していきます。
ただし、技術の面ではまた別です。
私がそうだったのですが、『派遣・出向型企業なら色々なシステムに関わるので、技術スキルが飛躍的に向上する』と考えていました。
もちろん、関わることで今までに扱っていなかった技術に触れることはあります。
でも注意しておきたいのは、下請けに近いほど、仕事の核部分には関われなくなっていくという側面です。
下請けには、より下流の仕事を任せる
ところで、『ウォーターフォール型』という開発モデルがあります。
これは、要件定義から基本設計・詳細設計と設計書を揃えていき、情報が揃った段階でコーディングに入り、単体試験・総合試験と進んでいく、後には戻らない開発方法です。
今でもこういった開発方法を取っている企業は多く、特に大きなシステムになるほど設計書をしっかりと作らなければならないので、重要になってきます。
では仮に、仕事を以下の作業に分類する事にしましょう。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- コーディング
- 単体テスト
- 結合テスト
- 総合テスト
- 受入テスト
- 納品成立
知らない方は、内容ひとつひとつについては特に分からなくても大丈夫です。
パッと見て、何が大変そうでしょうか?
……そう、テストですよね。工程全体のうち半分を担っている、単純作業です。
システム開発というのは、テストが大変なんですよ。
もし人が10人居たとして。そのうち6人は、自社のメンバーだったとします。残り4人は他社のメンバーです。
この人達で仕事を分業しようとした場合、どのように役割分担をすると、仕事がうまく進みそうでしょうか?
要件定義~構築までの難しい作業を自社メンバーで行い、教えれば誰でもできるけど仕事量がとにかく多いテスト作業を、他社メンバーに任せる。
どうしても、こうなるんですよね。
派遣メイン中小企業の、本当のところ
これは、私が実際に派遣メインの中小企業で経験した内容と、同じ業界に行った他のヒヨッ子エンジニア達が経験した事を総合して書いています。
自分で商品を持っておらず、しかし希少なスキルを持たず、どこかのプロジェクトに所属することで賃金を得ている中小企業。
こういった会社に所属して『エンジニア』を名乗ると、そこに舞い込んでくるのは基本的に物量をこなす単純作業になります。
決められた手順通りに基盤を完成させる仕事。とにかく手数の多い単体試験をゴリゴリこなす仕事。
企業目線で見ると、どうしてもそういった仕事を任せる事になりがちです。
もちろん、すべてがこうだという訳ではないのですが、確率は高いです。
なので、こと『システム開発』といった分野で経験を積みたいと思うのであれば、『商品を持っている会社』『商品を作っている会社』に行く方が、強みになる可能性が高いです。
そういった会社では、様々な現場をこなす事はできないかもしれませんが、システム開発において重要な『設計』や『構築』を学ぶ事ができます。
もちろん、上流工程から請け負う事を前提とした企業であるのならば、学べる事は多いです。この場合はまた別ですね。
もし、様々な現場を経験して成長したいと考えるのならば、今で言うと、たとえばAWSなどのクラウドサービスを専門に扱い、システムを作る会社など、『専門家が集まり問題解決を行う』ことを中心とした会社を目指すと、得られるものが大きいかと思います。
中小企業に転職する上での良いところ
『大企業は決断が遅い』『中小企業は小回りがきく』なんて言葉を、よく目にします。
実際に中小企業で働いてみて、私が良いところだなと思うのは、こんな所だったりします。
- 企業の全体を俯瞰して見られる
- 市場が限定的
- 望めばなんでもやれる
- 企画に関われる
逆に、中小企業でもこういった要素がない会社では、少なくとも私はうまく働く事ができないだろうなと思います。
なんとなく『中小企業は自由そうでいいな!』と思うよりは、こうして具体的な価値を追求していくことで、転職に失敗する可能性を減らせるのではないかなと。
転職はデリケートなものですから、納得いくまで検討を重ねたいですね。