うーん、『伏線を張れ』って言うけど、いまいち分からないわ。
伏線って何? どうやったら張れるのかしら?
どうすれば実践で使えるのかも知りたいわ。
そんな疑問に答えます。
感想を書く時には、わりと便利なワードとして用いられる『伏線』ですが、いざ自分で書く側に回ると、どうやったら効果的なのか、いまいちよく分からないという事がありますよね。
伏線は、『伏線を敷く』や、『伏線を張る』などと表現されます。
長いこと小説を書いてきましたが、言葉の意味まで掘り下げて調べた事は無かったので、今回改めて勉強し直しました。
ということで、初心者向けになるべく分かりやすい形で、今日から実践できる『伏線の張り方』について共有していきます。
伏線が何のことか分からない、言葉は知っているけど具体的な張り方がよく分からないという方は、ぜひ最後まで読んでいってください。
それでは、さっそく本編に進みましょう。
Contents
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【小説の書き方】伏線の張り方で意識することは3つだけ【初心者向け】
まず『伏線』という言葉ですが、これは「後で起こる出来事のために、あらかじめちょっとした形で用意しておくもの」という意味です。
その多くは、物語を盛り上げるために使われます。
この伏線が、ミスリードを誘う形で書かれていて、『Aだと思わせていたものが実はB』という展開になると、これを『叙述トリック』と呼んだりもします。
効果的な伏線を張るためには、重要なポイントが3つあります。
- 後で起こる出来事を盛り上げたい時に使う
- ひとつの話の中で、なるべく遠くに配置する
- 前もって用意しておく(後から伏線にしない)
この辺りが徹底できると、効果が高まっていきます。
それぞれ細かく説明していきます。
1.後で起こる出来事を盛り上げたい時に使う
伏線は基本的に、『後で起こる出来事を盛り上げたい時』に使います。
謎が解決するとか、感情が昂ぶるとか、新しい展開が生まれるとか、そういった瞬間にピンポイントで重ねてあげることで、効果が激増します。
逆に言うと、特にここぞという場面でない時に使っても……悪くはないのですが、効果はそこまで出ません。
なぜかと言うと、「ああ、あれか!」「そうだったんだ!」という驚きが、集中力を高めるからです。
どうでもいい時に伏線を使っても、「へえ……」くらいで流されてしまう事が多いです。
物語のクライマックスに集中して、いくつもの伏線を前半から仕込んでおくというのが、わりとポピュラーな使い方です。
いまいち使い方が分からない方のために、実例を書いておきます。
たとえば、とある俳優のオーディションに受かりたい役者のタマゴが、精一杯オーディションで演技を披露したけれど、落選してしまった時のことを考えてみてください。
少なからず、落胆があると思います。
ところがこの時、手前で地方に住んでいる親から「このオーディションに受からなかったら、実家に帰って来なさい」と言われていたらどうでしょう。
どうしても受かりたいという役者さんの気持ちは、何もない時よりも強く昂りますよね。
こんな感じで、求めている場所に対して効果的な伏線を、前もって用意しておくのが重要です。
2.ひとつの話の中で、なるべく遠くに配置する
次に、『伏線はなるべく遠くに配置する』というのも重要です。
つい先程読んだばかりでまだ記憶に新しい状態だと、「そうだったのか!」という驚きは生まれにくいです。
なるべく短期記憶からは無くなっているタイミング、『聞かれれば思い出せるんだけど、自分からは出て来ない』くらいの時に出てくるのが最も美味しいです。
ただまあ、これは読者によっても異なるので、自分の思う距離感を大事にしていただければ大丈夫かなと。
重要なのは、『伏線には効果的な距離があるんだ』という知識を持っておくことです。
これが抜け落ちていると、いかにもわざとらしい伏線をすぐ手前に仕込んで、それをすぐ披露するという事をやってしまいがちです。
これも悪い訳ではないのですが、効果的かと言われると、なるべくプロットの上では避けたいところです。
あまりにもわざとらしい伏線は、読者の落胆を誘う事にもなってしまうからです。
様々な作品を見ていると、「伏線がすごいな」と思う作品ほど、前半のシーンに複数の目的があって、「前半のシーンだけを見ていても楽しめるけれど、後半と合わせて見るともっと面白くなる」という技術がすごいです。
思いつくままに小説を書いていると、こういった緻密な計画は中々立てられません。
まずは、伏線と回収の間に距離を置く事から始めてみませんか。
3.前もって用意しておく(後から伏線にしない)
3つめは、『なるべく前もって用意しておく』ということです。
小説を書いていると、後から「あ、ここのシーンと前のあのシーンはつながるな」と気付く事があります。
それで伏線として登場する程度だったらまだ良いのですが、積極的に伏線を探すとあまり良くない事が多いです。
どうして後から伏線を探すと良くないかというと、次の項でお話するタブーのひとつである『こじつけ』に繋がる事が多いからです。
伏線のこじつけというのは、本当に何気ないシーンとして描いていた一面を、『実はこうでした!』と半ば強引に紐付けることです。
こじつけた事が読者にバレてしまうと、「この作者、何でもありだな」と思われるようになります。
実際私も、毎日更新を続けていた時期はプロットが甘いために、こういったミスをよく起こしていました。
この現象については、後で詳しく解説します。
気付いたものを使う分にはこういった事は起こりませんが、積極的に探すとよく起こります。
伏線は計画的に利用しましょう。
小説の伏線でやってはいけないタブー
さて、伏線を張る時に意識すべきポイントがお話できたところで、『伏線のタブー』についても書いていきます。
きっと、小説やマンガ、映画やドラマなどで様々な作品に触れている方なら、一度は見たことがある内容だと思います。
ここでは、私が実際にやらかしてしまった経験をもとにお話していきます。
同じ轍を踏まないためにも、ぜひ心に留めていただきたい。
タブー①:ご都合主義
ご都合主義とは、立場や態度に一貫性がない場合に言われる言葉で、小説では『物語にとって都合が良いように、無理がある展開を作り出す』という意味になります。
もちろん、前もって計画された内容であれば、必ずしもご都合主義だと言われない展開もあります。
プロットを書かない場合によく、いやかなりやってしまう事なんですが、読者への効果は(マイナスの意味で)すごく高いです。
この、『無理がある展開を作り出す』という目的のために、伏線が利用されることがしばしばあります。
過去に書いたなんでもないシーンを持ち出して、「実はこうこうだから、この話はこれからこうなります!」と書くということです。
たとえば、どう考えても倒せない強大な敵を前にして、過去にあった恋人とのなんでも無い会話から突然に秘密道具を取り出して、「あの時もらったコレには、実はこんな効果があったんだ!」という話にしてしまう事などが該当します。
後から過去のシーンを書いて、『実はプレゼントをもらっていた』という展開にしてしまえば、パーフェクトなご都合主義の完成です。
もちろん恋人とのなんでもない会話の中で、たとえば『このプレゼントは、有名な魔法使いに作ってもらった』といったような内容が事前に公開されていたなら、話は別です。
でも後から手前のシーンがいじれない以上、手前にそんな都合の良いことは中々書いていないですよね。
伏線は、『手前で語られている』から伏線になるのであって、後から無理矢理に持ち出そうとしてもうまく行かないものです。
タブー②:とりあえずいっぱい話を広げておく
伏線の計画をきちんとしていない状態で話を書き始めたからといって、『とりあえず伏線らしきモノを沢山登場させておく』というやり方は、効果が薄いです。
伏線というのは、「そうだったのか!」という驚きを与える所から生まれます。
とりあえずそれらしきモノを沢山用意しておくと、回収できるものもあれば、できないものも出てきます。
このファジーな状態が、読者の『伏線回収に対する期待値』をぼやかします。
最後に回収されない伏線があったと感じた時、満足度が下がるからです。
読み慣れている人ほど、「これは回収不能だろうな」という予測を持ってしまうんですよね。
想像してみてください。とあるマジシャンが現れて、自分の前で沢山の手品を見せてくれるんです。
2~3個の手品を見せた後でトランプをシャッフルして、いかにもこれ見よがしにカードを引かせ、こう言うんですよ。
「あなたの手にしているカードは、1~13のどれかか、ジョーカーでしょう」
これを「確かに……!」と驚く人は、まあ早々居ないでしょう。
いや、逆に驚くかもしれませんが。
もちろん、計画的に話を広げているのであればOKです。
回収するだけが伏線じゃない?
この記事を書いていて、改めて伏線の書き方・考え方について調べていたのですが、伊坂幸太郎先生は『物語の風呂敷は畳むプロセスがいちばんつまらない』と語ったそうです。
謎は謎のままでもいい。広げる過程が一番楽しいのだと。
なるほど、そういう考え方もあるのか。と、少し新鮮でした。
私は最終的に『ほぼ台詞』といった形になるまで、全体像を掴みながら物語を書き起こしていくタイプです。
まるでパズルのように、正確にすべてのピースが登場してはハマっていく。登場したピースをはめている過程が一番楽しく、完成した時に美しさを感じます。
今回は伏線について書いていきましたが、人によって意見の分かれる部分は多そうです。
ここに書かれている事だけが正解だと思わず、ご自身の思う伏線の姿を大事にしてください。
その上で、この記事が何かの参考になれば幸いです。