『小説の上達には模写が有効だ』っていう話があるけど、どうやったら良いのか全然分からないな……。
手書きがいいの? 打ち込みでもいいの?
そもそも、これで本当に上達するの?
方法や手順、効果について教えてほしい。
こんな疑問について答えていきます。
『小説の上達には小説の模写が有効』と聞くと、一見してどんな部分に効果があるのか、分からない方も居ますよね。
いずれにしても時間がかかりそうだから、できれば最大の効果が発揮する方法でやりたい。
本当に効果があるのか知りたい。
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、『模写の効果と方法・手順』について解説していきます。
ただし始めにお話しておくと、このうち方法と手順の部分については、各個人で様々なやり方があると考えております。
なので、ここだけは個人的な主観が混ざります。
私は舞台演劇の勉強から入っているので、文章表現の勉強は後発です。
なので、他の方とは若干意見が違うだろうな、と感じています。
それでもこうして記事に起こす理由は、なるべく論理的に、効果があると示せる部分に限定した上で、私自身が実際に試して得た教訓を書こうと思ったからです。
なるべく分かりやすく話していきますので、『この方法は良さそうだ』と感じて頂けたなら、実践できると今より少し良くなるかもしれません。
『これは意見が合わない』と思ったら、そっとブラウザバックしてください。
Contents
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【小説の書き方】模写の効果と有用性について語る
まず一番知りたい『小説の模写による効果』ですが、代表的なものを挙げると以下があります。
- 自分が知らなかった新しい表現を覚えられる
- 自分が書きたい方向の文章に寄っていける
- 様々な応用ができる
ということで、主に文章表現上のスキルを磨いていくための手法になります。
ただ、なんとなく模写しても効果が薄いです。
というのはわりと様々な記事で見かけますが、じゃあ『効果のある模写ってなんだ』という所ですよね。
『意味をよく考える』『観察する』というのは、あまり具体的ではありません。
『1から10までひとまず模写してみる』というのもナシではないと思うのですが、結論から言うと、あんまり効率が良くないですね。
まずはそんな入りから、『模写の効果』について深堀りしていきます。
模写は小説をおもしろくするための練習法のひとつ
最初にお話しておきたいのは、『模写は小説をおもしろくするための練習法のひとつ』であって、『模写がすべて』ではないということですね。
中には「小説を書きたいなら、とりあえずプロの文章を模写せよ」なんて言葉も見かけますが、これもまた、ひとつの方法に過ぎないという話です。
ここを誤解すると、模写という練習法そのものが無駄になりがちだと感じています。
「小説は模写すればうまくなるんだ!」と思ってしまうからですね。
もちろん、ただ手を動かしてもあまり良い効果は得られません。
まず、小説というのは『文章で物語を表現したもの』です。
イコール、『だから文章が大事!』
……と考える方も居るかと思うのですが、まあまあそのあたりで少し落ち着いて、ひとまず分解してみて頂きたいのですね。
小説って、どんな要素に分解できるでしょうか。
- タイトル
- あらすじ
- 本文
急いで書くと思わずこんな事を考えてしまいがちですが、少し落ち着いて考えてみましょう。
- タイトル
- 背表紙
- あらすじ
- 登場人物
- 世界観
- シーン数
- シーンごとの展開
- 地の文
- 台詞
- 挿絵
細かくすればまだあるとは思うのですが(たとえばあとがきとか)、大体こんな要素に分ける事ができますよね。
もし、この中のいずれも、自分の小説をおもしろくするために強化できるとしたらどうでしょう。
実は『できるとしたら』なんて言いつつ、おもしろくできるのは確定なのでご安心ください。
『模写』という練習法で得られるのは、このうちの『セリフ』と『地の文』がメインです。
『模写』で得られるのは、『セリフ』と『地の文』の向上
『セリフ』と『地の文』が上達するというのは、一体どういう事でしょうか。
これは結論からお話すると、セリフと地の文が上達するというのは、『最も状況を的確かつ詩的に表現する方法を思いつく』ということです。
市場に出回るような小説を書く方は、多くがこの『的確』と『詩的』を両立させています。
『的確な文章』だけを追いかける場合、それはわりと淡白な、リズムのない文章になりがちです。
『詩的な文章』だけを追いかける場合、新鮮さはあるけれど、実際の状況はよくわからない、という事になりがちです。
そのため、どちらがダメでどちらが良い、という事は基本的にありません。
よいと言われる小説は、これらをある程度のバランスで両立させている事が多いです。
そして、このバランス感覚を養うとともに、ボキャブラリーを増やして文章の引き出しを増やしていくのが、『模写』という行為です。
これは英語で言うと、シャドーイングに似ています。
シャドーイングが分からない方のために簡単に説明すると、誰かが話した英語にすぐ後からついていって同じ言葉をしゃべる、という練習法です。
いかにも喋るための訓練のようですが、意外にもこれはリスニングに最も効果があると言われています。
ただし、『学問なき経験は、経験なき学問に勝る』です。これはイギリスの諺です。
最も自分を大きく成長させるのは、自分の小説を完成させた時です。
英語と違って小説は書けば実践できるので、あまり他者の作品ばかりに気を取られないように注意していただければ幸いです。
構造部分を模写で覚えるのは効率が悪い
中には、『登場人物』や『シーン』つまり小説の構造部分ですね、これも模写で鍛えなさいという方法も提唱されていますが、これは結果としてあまり効率が良くないです。
なぜかというと、ちょっと想像してみていただきたいのですが、登場人物やシーン構成って、文章とは直接関係しない、仮想現実でリアルに起きている出来事そのものの部分ですよね。
それを『完成した文章』から追いかけるのは、間接的なので効率が悪いんですよ。
たとえば、完成したオムライスの絵を描いて、中身がチキンライスかチャーハンか当てるみたいな難しさがあります。
ではどうすれば良いのかというと、最も効率が良い方法は『切ってみる』です。
できあがっている文章を、段落ごとに切ってみる。
段落ごとに切ったら、その概要を推測してみる。
段落ごとの関連性を考察してみる。登場しているキャラクターの登場理由を考えてみる。
こうやって構造を直接紙に書き出してみるのが、構造部分を知る上では最も近道です。
模写もまた、自分ではない誰かの作品を分析してみる行為なんですよね。
その時に重要なのは、なるべく感覚に頼らず、言語化できるように分析していくことです。
自分の中で言語化できていないものは、『感覚を忘れる』という事が起こります。これは、スランプに陥る最もよくあるトラブルです。
プロが言っていたから実践するのではなく、自分の中で効果があると感じているから実践する、という所まで落として考えてみてください。
もう、『模写に効果があるのか』なんて悩むことは無くなっているはずです。
模写で上達する小説の書き方・実践編
さて、ここまでの内容で『模写は本当に効果があるのか』という部分については、おおむね説明できたかと思います。
ここからは、より実践的な内容について説明していきます。
この内容を読めば、もう模写のやり方については迷わないはずだと信じています。
まず、概要から把握する事を心がける
これはあまり他のサイトで書いていなかったので補足しますが、まず前提として『小説は概要から掴む』というのが大事です。
文章のひとつひとつだけを抜き出して見ていても、『木を見て森を見ず』になってしまいます。
良い文章表現には『表現が的確である』という側面があるので、全体像を掴まずに端の部分だけを研究するのは難しいです。
まして、それを自分の小説に取り込むともなれば尚更です。
小説は全体のテーマがあって、始まりから終わりまでの流れがあって、その流れを構成するいくつかの要素があります。
そして、その要素の中に文章が入っている。
こう考えると、自分が追いかけたい目的のモノがクリアに、よく見えるようになります。
なので前述したのですが、ひとまずは自分の思う区切りの良い所でも良いので、小説を切ってみない事には話が始まりません。
サバイバルは、まず石を割るところから。物事の観察は、まず解剖からです。
そうして、『この小説のここからここまでの段落が好きだな』と思ったら、その部分の文章表現を追いかけるため、模写として一回書いてみるという事を実践します。
すると、意外なほど前後のパートに、ひとつひとつの文章が強く関係しているのだという事がよく分かるようになるはずです。
ちなみによくできている小説でこれをやると、概要から文章までの大部分がまるで自分が書いた小説のように、頭の中におさまることがあります。
もちろん一つ一つのセリフを思い出せるという事ではないんですが、同じ小説を書いてくれと言われたら、自分の言葉でもう一度書けるという感じです。
ここまでくると、模写の価値も大きく変わってきます。
基本は『音読』と『メモ』
とはいえ、こうした『小説を切ってみる』『重要な部分を模写して眺めてみる』という工程は大変だなあと思う方も少なくないと感じています。
なぜなら私も当時、非常に苦労したからです。
私はこの『物語構造の分解方法』とも言うべき内容を、当時一緒に演劇を制作していた演出家の方から教わりました。
演出家の方だったので、説明がわりと感覚値頼りで苦労したという側面もあったのですが、それを差し引いてもかなり頭を使いますし、苦労する作業だと思います。
そこで導入としておすすめしたいのが、自分が読んだ作品の良いと思った部分を『音読』ないし『メモ』することです。
世の中には、思わず音読したくなる文章に出会うことがよくあります。
そんな時、「うわー良い文章だなあー」と思って終わりになってしまうと、二度と思い出せなくなります。
ところが、「うわー良い文章だなあ、読んでみよう。うーん、やっぱり良い文章だなあ。メモしておこう」と2つの側面から繰り返すと、覚えている確率がグッと高まります。
これだけでも、自分の小説に活かせますよね。
私は15年前からこれをマンガ・小説・映画・ビジネス書問わず続けていて、わりと高い効果を感じています。
なので、前述の模写がハードル高そうだなと思ったら、まずこちらがおすすめですね。
小説の模写は、手書きの方が効果が高い
さて、ここまで小説を上達させるための模写について、解説してきました。
最後にふと見た内容で、『模写は打ち込みがいいか手書きがいいか』という質問があったのですが、これは手書きの方が効果が高いです。
何故かというと、自分の手を動かすために記憶に残るからですね。
タイピングでも良いのですが、手書きだと手に残るので、覚える確率が高くなります。
ただこれは、何年もデバイスで文章を書き続けた私からすると、回数の差で克服できます。
人の記憶は『関連付け』と『回数』で覚えていきます。
『○○小説の中の文章』という関連付けはすでにできていますから、『忘れてからもう一度思い出す』というのが非常に有効です。
なので、デバイスでメモしたいと思ったら、忘れてからもう一度読み直すことですね。
これで、手書きと打ち込みの差は克服できるのではないかと。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
私もまだまだ精進してまいります。