小説の書き方

小説における回想の書き方で重要なのは『意味を明確にする』ことです

ジェニファー

小説とかマンガのさ、回想シーンってあるじゃない。
あれが大事なのは分かるんだけど、回想シーンが長引くとすごく飽きちゃうのね。
でも飽きない回想シーンもある。何か書き方があるのかな?




そんな疑問に答えます。



舞台脚本から入って、Web小説を7年書きました。初心者にも分かりやすく読める事を意識して、小説の書き方に関するコラムを書いています。


回想シーンって、難しいです。

書き手側は主人公や登場人物に愛着があるので、ついつい出したくなる回想シーンですが、入れ方によっては「早く本編を進めてほしい」という意見が出ることもしばしばです。

もちろん、小説は読者によっても受け取り方が大きく変わるので、すべての読者を満足させる事はやはり難しいです。

でも、できれば回想シーンをうまく活用して、読まれる小説にしていきたいものですよね。


そこで今回の記事では、『回想シーンをなるべく上手に取り入れる方法』として、私がこの7年で発見したポイントについて書いていきます。

もしご自身の小説に活用できるようであれば、使って頂ければ嬉しいです。

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小説における回想の書き方で重要なのは『意味を明確にする』こと

初手からいきなり結論なのですが、回想シーンを取り入れる上で最も重要なポイントは、『回想シーンの意味を明確にする』ということです。

しかし一言で『意味』と言っても、色々な見方がありますよね。

そこで、最も注意しなければならないポイントとして、以下の2点をプロットの段階から文章にしてしっかりおさえておく事をおすすめします。

  1. 小説に対する回想シーン全体の意味
  2. 回想シーンに入ることの意味


前者は『回想シーンが物語に与える影響』に関するポイントで、後者は『回想シーンのつなぎ方』に関するポイントですね。

この2つがないと、小説の中で語られる回想シーンに役割を持たせる事が難しくなり、悪く言うと、読者から見て『ファンサービスの一種なのではないか』と思われる可能性が出てきてしまいます。


最も読んでいてつらい回想シーンって、その小説の時間軸に一切関わってこない回想シーンなんですよ。


このあたり、詳しく見ていきましょう。

1.小説に対する回想シーン全体の意味

まず最初に考えることは、『回想シーンは小説上でどう活躍するか』ということです。

私はここをなるべく具体的に、言葉にして考える事が大事だと考えています。

というのも、回想シーンは適当に考えると『なんとなく物語を盛り上げるため』に使われがちなんです。


これははっきりと言えるのですが、読者は『なんとなく雰囲気』を掴んでくれません。

もちろん、読者の中には作者の意図を掴んでくれて、感動してくれる人もいます。

でも、どちらかと言えばそれは少数派なんだというのは、Web小説を丸6年書いた上で私が結論付けたことです。

そのため、可能な限り明確に、分かりやすく回想シーンの意味を見せてあげることが重要です。


具体的には、以下のように回想シーンを使うことです。

  • 登場人物にとって、回想シーンの中で重要な判断がある
  • それが回想シーンを出て、メインの時間軸で明確に利用される


ここまではっきり書いてあると、回想シーンが無駄だと考える人はほとんど居なくなります。

つまり、メインの時間軸で判断した重要なことが、過去の経験に基づくものだというアピールをするんです。

たとえば、ピンチの状況でも人を傷つけられない主人公が、『どうして人を傷つけられなくなったのか』その経緯を過去で語るというのが代表的です。

そして、人を傷つけられなくなった結果、戦いを起こさない選択をするとかですね。現実の世界でも、過去のシーンを利用してあげることです。


これには色々な価値があり、たとえば明らかに常人では判断し得ないことを(一番のタブーは殺人なんかですね)、回想シーンの信頼性によって共感させてしまうという事もできます。

これは、回想シーンがあればこその展開と言って良いでしょう。

また、普通の判断であっても(降りかかる火の粉を払うとか)、回想シーンの存在によって重みを持たせることができます。

たとえば、似たようなシチュエーションを過去に経験していて、それをメインの時間軸で思い出す場合などですね。

このように回想シーンをうまく利用すると、よりシリアスなシチュエーションで効果を発揮します。

2.回想シーンに入ることの意味

さて、小説全体における回想シーンの立ち位置が決まったところで、次に考えることは『回想シーンの入り』です。

ここがうまくないと、「なんだよ回想かよ……」と思わせる事に繋がってしまい、大きく損をします。

回想シーンが退屈に感じられてしまうのは、そもそも回想シーンが長い場合もありますが、実は最も大きな要因は、『入りで失敗している』ということです。

つまり、うまく入らないと回想シーンの期待値がゼロの状態で読ませる事になってしまうんですよ。


ここに対しての解決策は、以下の2点です。

  1. 回想シーンの存在が重要であることを手前までの展開で示している
  2. 登場人物が回想に入りたくなるタイミングで回想シーンを差し込む


これがすごーく大事です。

回想シーンを小説全体の中で必要なシーンにするためには、『そこで何かがあった』ということを暗に示さなければなりません。

小説の登場人物はほぼ必ず何らかの個性を持っていますから、それに関連するものだと回想シーンは作りやすくなります。


そして、何故そのタイミングで回想に入るのか。

登場人物が回想に入るタイミングを探してプロットを作ると、減点される可能性が少ないです。

たとえば、メインの時間軸で過去の決断に関連するシーンを用意して、登場人物にそれを思い出させる、というのが代表的な手法です。


言い換えると、『回想に入る理由』と『回想に入るタイミング』を網羅することで、回想シーンで読者のテンションが下がってしまう理由を潰していくというわけです。

ところで、小説に回想シーンが入ることは良くないことか?

上記のとおり、回想シーンというのは戦略的に書かないと、メインの時間軸から外れることで読者の期待値を下げてしまい、逆効果となる危険性をはらんでいます。

では、回想シーンが入ることがそもそも良くないのか? メインの時間軸だけで構成されるストーリーの方が優秀なのか?

この点、ある程度主観が混じってしまいますが、疑問を解決していきたいと思います。


結論、回想シーンというのはたとえば『小説内で視点移動がある小説』と同じように、一定数の読者が嫌っている構成ではありますが、回想そのものが良くない訳ではないです。


このように意見が分かれてしまうのは、小説の書き方によっては逆効果になってしまうため、読者によっては『回想シーンそのものが悪い』『視点移動することは悪いこと』といったようにパターン認識されてしまっているからです。

ざっくり言うと、『チェックのシャツ=オタク』みたいな感じです。

回想シーンでしかできない事がある

たとえば、登場人物の幼少期の話など、メインの時間軸でやろうと思うとあまりにも時間が途中で飛んでしまい、最初からは語れない事があります。

また、回想シーンでやるのがベストなものを、無理にメインの時間軸でやろうとしてしまう事でシーンの数が増えてしまい、逆に間延びする結果になることもあります。


過去パートに重要なシーンを盛り込んでおくというのは、言わば小説内でのガソリンのような役割があり、メインの時間軸で起こっている出来事を加速させる事につながります。

ひとつだけ謎が残ったままで、それが中々解決しない時、基本的に読者は謎をどうしても意識することになります。

それが回想シーンによって解決された時に話が繋がり、クライマックスに向かっての興味を加速させるというわけです。

これが、謎が一番最初に解決されてしまうと、引っ張りようがありませんよね。

でもメインの時間軸オンリーの場合は基本的にこういった作戦が取れず、かなりトリッキーな戦略を取るしかなくなってしまいます。

主人公が過去に遡るとか。これはこれで面白いとは思うのですが。


というわけで回想シーンというのは、『登場人物の判断に興味を持たせる』ということをかなり効果的に行う事ができるんです。

シンプルではありますが、登場人物の心の動きを読者に正しく知ってもらうためには有効な手段でしょう。

良くない回想シーンが読者の期待を薄れさせる

その一方で、回想シーンの使い方によっては、読者の興味を一気に潰えさせる爆弾にもなってしまいます。

最もありがちなのは、『単にすごく悲しい過去』として回想を書いてしまうことです。

回想シーンで、『すごく悲しい過去』に焦点を当てるか、『すごく悲しい過去があった上での登場人物の判断』に焦点を当てるかというのはかなり大きな違いがあり、回想シーンの質に直結してきます。


一言で言うと、『過去があった上での今』につながるかどうか、という所です。


回想シーンには重要な分岐点が描かれる事が多いのですが、それはあくまでメインの時間軸のためのものです。

メインの時間軸に影響がない回想シーンは、読んでいて退屈なものになってしまいます。

たとえどんなに悲しい過去があったとしても、それが今につながらなければ単なる補足事項でしかないのです。


ここの違いが、『回想シーンは間延びして退屈』という感想を生むひとつの原因になっていると、私は判断しています。


たとえば、『今当たり前のように接している2人のキャラクターの出会い』を書こうと思うのなら、メインの時間軸では、その出会いが必要な局面に達していなければ書く意味がありません。

代表的な所では、『喧嘩して仲が悪くなる』とか。その問題を解決するために、回想シーンで出会いの時に感じた気持ちを使うことなどです。

作者としてはキャラクターに愛着があるので出したい所なのですが、もし読者にも愛着を持ってもらいたければ、愛着を持たれるだけの工夫が必要なんだということでもありますね。

回想を効果的に使って、小説を盛り上げよう

ということで、今回は小説の回想シーンについて触れていきました。

回想シーンはうまく使えばその効果は絶大です。私もかなり多く使う方です。

でも、私もやってしまいがちなのですが、失敗するとほんとに目も当てられない展開になりますね。気を付けています。

昔、幼少期に某有名マンガで「あー回想シーン入った、飛ばそー」という友人がそれなりに居た訳なんですが、あれを思い出すたびに気持ちが引き締まります。


表面的な良い悪いではなくて、その手法が存在する効果の部分に着目すると、うまく利用できる可能性が高まるように思います。

もし今、回想シーンを使うことをためらっている人がいるのであれば、上手に使うためにはどうしたら良いかを検討してみてはいかがでしょうか。

私も、さらに精進してまいります。

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