短編小説を書いてみたいけれど、短い話ってどんな風に書くんだろう?
やっぱり制約があるのかな。短編から始めたほうが良いって聞くけど……
書き方を知りたいな。
そんな悩みにお答えします。
簡単なようで難しい、短編小説。実は、あっさりとした中編よりも書きにくいかもしれません。
文章量を削って面白い話を作るためには作戦が必要であり、適当に書き出してしまうと、短い上に何が言いたいんだかよく分からない小説になってしまいます。
なんとなく、目的の長さになれば良いのですが……中々、そういう風にはなりませんよね。
この記事では、短編小説を書くにあたり気を付けておいた方が良いこと、知っておくと有利なことについてお話します。
昔、仕事で『たった一週間で短編4本』を書いた事があるので、何かの参考になると信じています。
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短編小説の書き方、その定義とは
短編小説を書く! ……と意気込んだは良いものの、短編小説とはなんでしょうか。
意外と答えられない方も多いのではないでしょうか。
実は私も長いこと、この定義について詳しく調べておりませんでした。
明確な定義があるわけでは無いようですが、一般的には以下の長さのものを、短編・中編・長編小説と呼んでいます。
ポイント
- 掌編小説 :原稿用紙1~2枚程度(400~800字)
- ショートショート:原稿用紙2~10枚程度(800~4,000字)
- 短編小説 :原稿用紙10~80枚程度(4,000~40,000字)
- 中編小説 :原稿用紙80~300枚程度(40,000~120,000字)
- 長編小説 :原稿用紙300枚以上(120,000字~)
※カッコ内は、原稿用紙1枚を400字とした場合の文字数です。
ちなみに、文庫本一冊の長さが(本の大きさにもよりますが)10~13万字程度です。
こうして一覧で見ると、短編小説と言っても4万字程度まではあるということです。
4万字って、そんなに短くないのでは……? と思う方もいるかもしれません。
でも実際話を書き始めてみると、4万字はけっこう短いです。
原稿用紙1枚を400字とすると、ざっくり100枚に収まるように、話を考えなければならないということです。
学校で書く作文よりは明らかに多いですが、小説は色々な要素を文章で説明しなければいけないので、意外と長くなっていきます。
参考までに、私が初めて完結させた小説は5万字程度でした。
はじめは短編小説の書き方から勉強しなくても良い理由
体験談からお話しますが、私としては、最初のうちは短編にこだわらない方がいいと考えています。
短編小説って、意外と難しいんですよね。
短編にこだわる事で無理なストーリー展開が増えてしまい、冒頭でもお話した「短い上に、何を言いたいんだかよく分からない小説」へと変貌してしまう可能性が高いです。
むしろ、長くても良いので丁寧に書く事を心がけた方が、良いものになります。
三幕八場のような既存の構成をうまく利用して、とにかく自分が満足の行く、面白いと思える話を作る事に意識をシフトしましょう。
たとえばWebに公開するにしても、小説全体の長さは読者にとって、そこまで大きくは意識されない項目です。(一話あたりの長さはけっこう大事です)
長いからといって、読んでくれないという事もないです。
無理に短編にまとめた結果、必要以上に文字数を気にしてしまい、その後もうまく書けなくなってしまった……という事になってしまうと、少し残念ですよね。
短編小説には、『文章を短くまとめる技術』『話の展開を、○万字以内で作る技術』など、実はそれなりにスキルを必要とします。
文章の長さを指定して書くことになるからです。
『自分がひとつのシーンを書いたら、どれくらいの長さになるか』が感覚値でも分かるようになってくると、短編は簡単に作れるようになります。
なので、まずは長さを気にせず、完結させられる所が重要ですかね。
三幕八場とそれを応用した簡単な小説の書き方については、以下の記事で紹介してあります。
もしよろしければ、参考にしてみて頂ければ。
参考小説の書き方、簡単に面白くできる定番テンプレートをご紹介!【三幕八場】
続きを見る
短編小説で、しっかり感動する話を作る事はできるのか
文字数が少ないと、小説にならないんじゃないですか? なんて話を、何度か聞いた事があるので書いておきます。
物語の長さは作品の完成度に全く影響を与えないです。
前述のように、『限られた文字数で小説を書く』という力が身についてくると、文章量はある程度、自在に操作できるようになります。
もちろん、400字で書くのは難しいかもしれませんが……1万字とか、5,000字くらいあればやりようはあります。
これは発想の転換が必要で、『短いから言いたいことが言えない』のではなく、『短いなら短いなりの表現・シーン数に調整していく』というのが重要です。
たとえば、登場人物の人数を減らすこと。これは、文章量に直接的な影響を与えます。
1万字程度の小説であれば、登場人物は2人に限定した方が、より深い構造にすることができます。
文章も、できるだけ短く簡潔に、必要な事以外は説明しないよう心がければ、わりと短くても表現できる事は多いです。
ただ、これらは『決められた長さで書く』という訓練がされていないと、中々たどり着けないのも事実です。
そして、まずは一本でも完結させないと、どのくらいの長さが必要になるのか、想定ができません。
そういう意味では、道のりが少し長いかもしれませんね。
短編小説を決められた長さで書くためのアプローチ
『決められた長さで書く』という訓練をしましょう、と話してきましたが、ではどうしたら決められた長さで書くことができるのでしょうか。
これは結論から言ってしまうと、シーン数で調節します。
この小説の書き方コラムでは、登場人物の気持ちがAからBに変わるまでの一区切りを『シーン』と呼んでいます。
こう定義しておくと、シーンの分け方で困る事が少ないのでおすすめです。
そして、実際に『登場人物の気持ちが変わる時』を意識してシーン分けをしていくと、そのシーンを書くために必要な文章量が、後から段々と分かるようになってきます。
たとえば、ガンダムってあるじゃないですか。
完成したガンダムを外から見ていても、素人目には『それがどんなパーツで構成されているか』って分からないですよね。
でも、パーツリストから組み立てる事は、説明書があれば誰にでもできます。
小説も同じで、全体をぼんやりと眺めて分からなければ、区切って分解して考える事が大事なんです。
このあたりは『小説の書き方のコツ』という記事でより詳しく紹介しましたので、もし良ければ参考にしてみてください。
参考【初心者向け】小説の書き方のコツをたった5千字で超簡潔に説明する
続きを見る
シーンの数を少なくする方法で効果的なアプローチは、やはり登場人物を少なくすることでしょうか。
ある物語をひとつの問題→解決までの流れだとした場合、登場人物が2人の物語と5人の物語では、関わる人物に差があるだけ5人の物語の方が長くなります。
わりと、『2人だけの物語を作る』と決めてしまうと、短編で書ききれる事は多いかなと思います。
短編小説を書くときには、自分が書く1シーンの長さを覚えておこう
さて、『1シーンあたりの文章量がだんだん分かるようになっていく』という話なんですが、ここを少し深堀りします。
もっと詳しく言うと、『ある会話が終わるまでの文章量』がイメージできるようになってきます。
でもこれは、そもそも文章量を意識していなければ、中々気付けないことです。
なので、自分が実際にシーンを書いてみて、それが何文字かかったかというのは、別に記録しなくても良いので調べておくようにしましょう。
今はネットで調べれば、『文字数チェッカー』というのがありますし、サクラエディタやWordなどでも文字数は測ることができます。
自分が書く小説が、あるひとつのシーンを書くためにどの位の長さを必要とするのかは、ある程度把握しておくとやりやすいです。
短編小説は最終的に文字数との戦いになりがちですから、一度小説を書き切ってしまい、短編小説の長さに合うように後から文章を削っていく、という書き方を取る事が多いです。
でも、1シーンの長さがどれだけあるのかを把握しておかないと、後からどれだけ削っても、短編小説にならないという現象が発生することがわりとあります。
たとえば、1シーンを書くのに5000字かかる人が、いざシーンの文章量を削ろうとしても、5000字を2500字にすることは中々できないんですよね。
でも、5000字のシーン3つを5000→4000字に変更して、本来15000字かかる予定だった物語を12000字にする事くらいはできるんです。
こんな感覚値を養っていきましょう。
ちなみに私の場合、1シーンにかかる文章量はだいたい、3000~5000字程度です。
決められたシーン数で話を書く時の、短編小説の考え方
さて、上記のように考えて行ったとしても、どうしてもシーンの数を削れないお話というものも、中には出てくるのではないでしょうか。
シーンを削ってしまうと前後の話が繋がらなくなってしまうし、かといってどうすればいいのか……。
そんな時に、おすすめしたい考え方があります。それは、『シーンを合体させること』です。
ひとつのシーンで両方語る手段があるか? というのを、プロットの段階で考えてみるというのがおすすめです。
一見違うシーンとしてしか話が成立しないと思っていたものも、よくよく見てみると『同時にできるかも』というのは、実はよくあることです。
これはプロットを書いていなければ思い付けないものですが、非常に有効です。
よくあるのは、『AさんがBさんに○○を伝えたい』という目的のためだけに書かれたシーンが、他の『AさんがBさんに××を伝えたい』シーンと合体する、というような感じです。
削るのではなく合わせるという考え方はとても大事で、話の密度も上がり、スピードが増すというメリットもあります。
より退屈しない話にできるのなら、万々歳ですよね。
文章量の把握ができれば、短編小説が書ける
ということで、ここまで短編小説を書くための6つのステップとして書いてきました。
色々な方法を試しながら、自分にとって最もしっくりくる書き方を発見して貰えれば、これ以上の事はありません。
短い文章で人を感動させるというのは、突き詰めると本当に深い技術であり、研究するのが楽しくなりますね。
私も、このまとめを読み返しながらもう一歩、今よりも先に進めるよう努力してまいります。