大学を卒業してしばらくアルバイトをやっていたけど、このままじゃいけない事はわかってる。
でも、今から大企業に入ることはできないし……。
ベンチャー企業なら狙えるのかな? 頑張れば転職できる?
とあるベンチャー企業で採用担当をやっています。こんな疑問を解決していきたいと思います。
結論から言うと、ベンチャー企業『だから』未経験でも大丈夫、ということはまずないです。
ベンチャー企業だって、どこでもそれなりの入社選定があります。むしろ、先進的な技術を使って問題解決を行うベンチャー企業は、入社にあたりスキルが前提になっている事がほとんどです。
そして、会社の大きさに関わらず、『誰でも入れる』会社の多くがブラックであることは、疑いようもないでしょう。
なぜなら、『誰でも入れる』ということは、つまり『労働力が利益になっている』ということだからです。労働力が利益になるなら、可能な限り長時間働くのが最強ですよね。
だから、転職することでキャリアアップを狙うのなら、作戦が必要です。
ということで、この記事では、以下のような人を対象にして、未経験で(特にIT系の)ベンチャー企業に転職する方法について書いていきたいと思います。
- 現職はアルバイトまたはブラックな労働系の仕事
- ベンチャー企業に興味がある
- なんとかしてキャリアアップしたい、転職したい
私自身がノースキルから実績積み上げで技術開発責任者&採用担当まで来た経緯があり、こんな人物にはけっこう共感できます。
それでは、本編に進みましょう。
Contents
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未経験でベンチャー企業に転職するための3つのポイント
ベンチャー企業に転職するには、以下のポイントを抑える必要があります。
- 自分が転職したい会社の『段階』を知っている
- 転職したい会社にアタックするマッチングポイントをおさえている
- 面接で自分をアピールする方法が分かっている
『ベンチャー企業』って、本来ひとくくりにはできない程様々な業種・業態があり、それによって会社の雰囲気もかなり大きく変わってくるので、一概には言えない難しさがあります。
……が、できるだけ共通して必要になるであろう知識について解説していきます。
その①:自分が転職したい会社の『段階』を知っている
これは少し前に、『ベンチャー企業転職のメリット』でも解説したのですが、新しいサービスを作った時には、『未熟期』『成長期』『成熟期』『終焉期』の4つの段階があるということを、意識するのが大事です。
以下の記事で詳しく説明していますので、もしよければこちらも参考にしてみてください。
参考ベンチャー企業へ転職するメリットを解説する【実務10年】
続きを見る
そして、それぞれの段階で求められる人物像というのは変わって来ます。
- 『未熟期』
スタートアップ人材。『経営企画』『商品開発』『営業』『人脈』にシンプルに強く、飛び抜けたスキルがあると採用される。 - 『成長期』
事業拡大用人材。『コミュニケーション能力』『競合分析』『商品強化アイデアの発案・開発』など、会社のステップアップに貢献するスキルがあると採用される。若手ならやる気採用も視野に入れる。 - 『成熟期』
事業効率化・サポート用人材。『作業時間短縮』『仕事の効率が良い』『言われた仕事をこなすのが早い』という、地頭の良さが採用に繋がるケースが多い。会社の商品によっては大量の人材採用もある。 - 『終焉期』
人がサービスから離れていく段階なので、ここで配属されてしまうとサポートの仕事だけで終わる可能性大。新規採用は基本的にしない。
ベンチャー企業というのか、ある商品がスタートから廃れていくまでの時代背景を書いたものです。もちろん、この中には成功する商品・失敗する商品があるので、「うまく行く場合はこんな流れになるよ」という目安として覚えておくと使えます。
これを見てみると分かるかと思うのですが、昨今の商品・サービスはとても移り変わりが早いため、『安定する時代』というのは基本的に無いと考えておいた方がむしろ安心です。
『4つの段階のうち、どこに居る会社と付き合い、採用される事を目標とするか?』
この意識が最も大事かな、って思います。外側から会社の状態を判断できる唯一の要素でもありますし。
その②:転職したい会社にアタックするマッチングポイントをおさえている
①の要素も考えつつ、『自分が転職したい会社にどういった内容で貢献できそうか』という事を理解していると、採用率が圧倒的に高まります。
逆に、ここが分かっていないと「なんでもやります! 任せてください!」みたいになりがちです。
『どちらに皿洗いを任せますか?』
- A……なんでもやる気のある人
- B……皿洗い歴10年のベテラン
同じ年齢なら、皆等しくBを選びます。
でも、100%全員がBを選ぶ訳ではないんですよね。
ここはわりと重要で、勘違いしがちです。
大事なことは、『自分の価値』と『会社のニーズ』をどうすり合わせて行くかです。『普通に考えればBだが、なぜここでAを選ぶか?』という所に自ら回答を用意することです。
これを真面目に考えると、未経験でベンチャー企業に転職する道が見えてきます。
たとえば、皿洗い歴が10年の人は皿洗いには強いですが、他の要素では見劣りするかもしれません。そこに料理の知識があることをアピールするとか、そういう感じです。
会社の事を深く知らないと、『ノープランでひとまず面接を受けてみる』といった雰囲気になってしまいがちです。これだと、ふるい落とされる可能性が高くなります。
とくに若いベンチャー企業は、商品・サービスの企画があって技術力があり、資金と人手が足りない傾向にあります。この『人手』の部分にどう切り込んで行くかです。
ITベンチャーの場合は、ソフトウェア開発などの技術が最低限必要になる事が考えられます。ここについては、以下の記事も参考にしてみてください。
参考現役エンジニアが未経験IT転職のポイントを3つ解説する【初心者向け】
続きを見る
その③:面接で自分をアピールする方法が分かっている
ここまでは転職先の会社について調べて来ましたが、最後に考えるべきは、『自分のアピールポイントをどこに置くか』です。
これは、②で解説した『マッチングポイント』と深く関連しているほど、採用率が上がります。
最も大事なことは、『実績ベースで自分を語ること』です。
ITベンチャーだから、技術の話をしないと……! と思っても、未経験の場合はとくに、面接官と専門分野で対等に話せるということはまずないです。
各社が培っている技術というのは、同じITでも日本とブラジルくらい違います。
技術開発職としてIT分野を触りはじめて10年以上経ちますが、未だに全く分野の違う開発会社さんとお話するときは、しばしば分からない単語が出てくる事があります。
本で勉強したら分かるくらいの事ならまだどうにかなりますが、『タスク』『ステップ』『マーケティング』など、当たる範囲が広い単語は会社によって使い方が違って、もうお手上げ状態です。
未経験の場合は、この『単なる技術用語』と『自然とその会社で使われるようになった言葉』の違いも分からないという事があると思います。
だから、そこに付いて行こうとしなくて大丈夫です。無理に背伸びをするのではなくて、自分の立ち位置をありのままに語ると、共感される事が多くなってきます。
- どんな所に興味を持っているのか?
- これまでどんな事を勉強してきたのか?
- 会社の中で、どういう存在になりたいのか?
私が未経験の方を自分の会社に紹介する時は、これが素直に話せる人をまず第一の条件にしています。
正直に言うと、一度商品がビジネスとして回り始めた後では、『技術についての知識はあるが、プライドがすごく高くて扱いにくい人』より、『円滑にコミュニケーションできて学習意欲が高く、低姿勢で謙虚な人』の方が嬉しいし、一緒に仕事をしたいと考えます。
だから、未経験でも『自分のやりたい事がはっきりと話せて、低姿勢で謙虚な人』を求める会社はきっとあります。
私だけではないはず。
未経験でベンチャー企業に転職した後、気を付けたいポイント
さて、上記のポイントをおさえて面接を進めると、転職できる可能性が上がります。
運良く会社に潜り込む事ができたら、そこからキャリアアップを考えていきましょう。
というのも、ベンチャー企業って考え方によってはチャンスなんですよ。とくに、オリジナルの商品・サービスを持っている会社はとても大きなチャンスです。
意識しておきたい事は以下の3つになります。
- 経営者の目線で働くこと
- 常に商品・サービスを進化させていく視点を持つこと
- 作業時間の効率化に全力を尽くすこと
これらを意識する社員は、信頼される可能性が高まります。
それぞれ見ていきましょう。
転職後のポイント①:経営者の目線で働くこと
とくに若いベンチャー企業などは、新しい発想の商品・サービスを持っていますが、まだこれが世の中に浸透していない事も多いです。
そもそも若い会社というのはルールが定まっていない事が多く、企画・営業・開発・経理・コンプライアンス、様々な問題に遭遇します。
こんな時、ただただ社員として働く事を意識すると、以下のような感想を持ってしまいがちです。
- 仕事と給料が見合っていない!
- 残業時間が長すぎる!
- 休日出勤が多すぎる!
- 自分ばかり嫌な仕事を任される!
- やりがいがない!
正直、転職する前であってもそう考える事が多いようであれば、ベンチャー企業には向いていないかもしれません。
『誰かが仕事を与えてくれる』と思っていると、ベンチャー企業では失敗します。
「そうは言っても、未経験だし最初なんだから」と思うかもしれませんが、転職した以上、20歳でも60歳でも立場は同じです。目標とするべきことは、『自社の商品・サービスを、世の中に浸透させること』これだけです。
こういったカオスな空気が、ベンチャー企業が敬遠される要因のひとつなのかもしれません。
ただ、自分で商品を企画し、開発し、それを営業し、販売して納品し、サポートをするというのは、一度経験するとどんな会社にも応用できます。
つまり、転職後の転職でめっちゃ有利なんですよ。変な話なんですが。
具体的に例を出すと、私がヘッドハンターからオファーを頂いた時は、年収7桁より8桁の方が多かったです。それだけニーズがあるということです。
だから、カオスに足を踏み入れる価値はあるのかな、と思います。
転職後のポイント②:常に商品・サービスを進化させていく視点を持つこと
ベンチャー企業に入った以上、商品を進化させるのは自分です。
新しい商品を世の中に浸透させるのも、有権者を口説き落として使って頂くのも、自分です。
そこにマニュアルはありませんし、『こうすればできるよ』と保証された制度も、どこにもありません。
だから、より価値のある方向を目指して、常に自分自身が変わっていく。これが重要だと日々感じています。
社員数が少ない事も多いでしょうし、社員はみんな仲間です。
会社には『2:6:2の法則』というものがあり、最も仕事をする人間は、全体のうちたった2割だとも言われます。ただただベンチャー企業で他の人にしがみついていると、あっという間に落ちていきます。
大企業のように、その会社に所属するネームバリューというのはありませんから、一転して転職でも大幅に不利となります。
誰にも説明してもらえない、誰からも教育してもらえない状態で、いかに変わるか。ベンチャー企業は、これに尽きます。
『お金が絡まない失敗をいくつ積めるか』です。
転職後のポイント③:作業時間の効率化に全力を尽くすこと
まだ商品を出したばかりのベンチャー企業は、ほぼ必ずと言っていいほど、労働時間がブラックです。
何故そうなるか。そこには、『プレッシャー』があるからです。
まず会社の代表が、『その商品が転んだら破滅』という背景を持っているので、死ぬほど残業します。
次に商品の開発責任者は、その商品が良くなければ会社が倒産という背景を理解しているので、死ぬほど残業します。
次に営業責任者は、その商品を売らなければ会社が倒産という背景を理解しているので、死ぬほど残業します。
つまり、全員が死ぬほど残業している状態です。
この状態が長く続くと、シンプルに死にます。
誰も、この状態が良いと思っていません。でもやがてそれは形骸化し、『残業は当たり前』という雰囲気が出来上がっていきます。「まだ定時か……そういえばあれ調べちゃうか」みたいな感じです。
このままではいけません。そして、それが形骸化してしまっている以上、転職者が会社の雰囲気を変えるしかありません。
良かれ悪かれ、転職した人というのは会社の中では新しい風のようなものです。全員が残業時間を少なくできるように工夫していくと、『残業やめよう文化』が年単位で少しずつ、できていきます。
私も入社当時は100時間以上残業していましたが、今は8割以上定時で帰っています。
『ブラック企業』なんて自分の手で変えてやろう、ということです。
残業が多いままで人が増えていくと、それはどんどん困難になっていきます。弱小ベンチャー企業だからできる荒業かなとは思いますが、ぜひ。
未経験でベンチャー企業への転職は『高い壁』だ
ここまで無感情に書いてきましたが、成功していないベンチャー企業って、本当にカオスな状況だったなあ、と思います。
転職直後、社長から「誰あいつ」と言われたのは、10年以上経った今でも記憶に新しいです。
仲間も増え、黒字化し、資本が増え、責任が増え……思えば、遠くに来たものです。
確かにベンチャー企業は高い壁ではありますが、自分の手で作っていくものが多い分、楽しい環境ではないかとは思います。
結局、大企業へのお誘いも断ってしまいましたし……まだまだ、やめられませんなあ。