スタートアップからずっと参加してきたベンチャーが、ついに黒字化。
嬉しい面もあるけれど、どうも会社の風向きが怪しい。
自分が企業を立ち上げる時は、組織が崩壊しないようにしたい。どうすればいい?
また、自分が従業員だった場合の対策はある?
スタートアップに近い所から、ベンチャー企業の黒字化に関わりました。そんな視点から、『ベンチャーの組織崩壊』という問題についてお話します。
組織崩壊、怖いですよね。これまで一緒にやってきたはずの仲間が、突如として去っていく。
ベンチャーと言わず、少人数でチームを組んで事に当たった時は、必ず起こる問題だと思います。
ベンチャーに長いこと勤めている身なので、今回は過去の体験を通じて『チームでやっていた事が成功に導かれても、こんな所で組織は簡単に崩壊するんだよ』という、一種の教訓としての記事を書いていきます。
主に、これから起業しようとしている、若い社長や社員向けに書いていきます。
対策もセットで書いていきますので、今現在、少人数でチームを組んで事に当たっているという人は、ぜひ読んで頂きたいと思います。
それでは、さっそく本編に進みましょう。
Contents
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黒字化したベンチャー組織が崩壊する、たったひとつの理由
黒字化したベンチャー組織が崩壊する、たったひとつの理由。それは、『誰もが自分の利益の最大化を意識し始める』という事になります。
ぶっちゃけ、少人数でチームを組んでいる時って、赤字のうちは平和なんですよね。
追求する所は同じで、皆がチームの利益のために頑張っている状態ですから。
そうして頑張っていると、どこかで認められる時が来ます。
非営利組織なら、周囲に認知されることで全員が喜びを感じ、一体感を伴うような出来事も多いと思います。
しかし、営利目的、つまり自分たちが豊かになる事が主な目標のひとつとして意識されている場合は、利益が得られた瞬間に少なからず、衝突することがあります。
ここに注意が必要です。
まずは『なぜそうなるのか』という部分について、組織崩壊を実際に経験した身として、お話したいと思います。
誰もが『自分の利益を最大化する』ことにフォーカスする
たとえば今チームを組んでやっている人たちが、お金を目標にして仕事をしていたとして。
ひょんな事から顧客に認められて、突然商品が買われ出したとします。それまではやればやるだけ赤字だったものが、ある日唐突に大きな利益を稼ぎ始めます。
そうして、その年の利益が、仮に1億円に到達したとしましょう。
「5人だから、ひとり2千万円ずつね」
はたして、そうなるでしょうか?
ならないですよね。絶対にならないんです。
それぞれが『利益を得る』という目的で動いている限り、そこに自分が手に入れられる利益さえあれば、今度は必ずそれを、最大化したいと思うようになるんですよ。
かつては同じ志を持った仲間同士でしたが、ある日1億円の賞金を目指して、チーム内バトルが勃発します。
そして、その最終判断を迫られるのが、社長です。
なんて書くと、社長はとても重たい責務を負っているかのようですが、実際利益が手に入った時に、それを好きにできるのはオーナー社長だけなので、ぶっちゃけ何でもありです。
赤字だった頃は『この会社が黒字になったら、お前の給料も上げてやるから一緒に頑張ろう』とか、『もしこの会社で成功できたら、お前の起業も手伝ってやるからな』と言っていた人たちが、突如として『従業員は働いた分だけ給料を与える』なんて言うようになります。
こんな事は小さな会社では、日常茶飯事と言ってもいいくらいの出来事です。
でも、仕方がないんですよね。利益が手に入ると、次に人は、その手に入った利益が愛おしく感じられてしまうものなんですよ。
たとえ一緒に頑張った仲間と言えど、どうしてもそれを分配する気にはなれないんですよね。
だって、生活の柱さえ握ってしまえば、彼らに残された選択肢は『転職』のみになってしまう訳ですから。
『成果』と『見返り』の間にあるバトル
さて、ここまでは社長について書いてきた訳ですが、社員だって負けてはいられません。
少人数の会社では、基本的に誰もがキーマンです。ひとり欠ければ会社が苦しくなる事は間違いないですから、ここで対立が生まれます。
つまり、『給料を上げろ。さもなくば退職してやるぞ』という姿勢を見せ始めるのです。
もちろん、実際に転職した時に給料を上げられるかは分かりませんから、わりとこれは捨て身の策です。
社長はそんな社員の態度に悩まされながら、『どの程度昇給をすれば、最も利益を最大化した上で働かせ続けられるか』という、さじ加減に悩むことになります。
私たちは若い頃、もしくは大人になった今でも、『友情・努力・勝利』という、少年ジャンプのテーマを胸に、生きてきたはずです。
しかし、現実世界で『友情・努力・勝利』が成立するのは、本当に一部の、洗練されたメンバーでなければ、為し得ない出来事なのです。
普通の会社で仕事してきた人からすれば、あり得ない事だと思うかもしれません。
でも、少人数で利益も厳しい会社では、わりとこんな衝突があります。
ベンチャー組織の崩壊を防ぐ対策は?
さて、若い小さなチームが利益を出した時に起こる出来事については、これで概ね理解して頂けたのではないかと思います。
実はこの現象には、赤字のうちから決めておかなかった、ある『決定的な課題』が原因になっています。
結論、ベンチャー組織の崩壊を防ぐための方法は2つです。
- 事前に、成功した場合の報酬について具体的に定めておくこと
- 誰が抜けても大丈夫なように、社員への依存度を減らすよう運営すること
ここが無いと、前述のような問題が発生してしまいます。
でも赤字の時、まだプロジェクトが成功していない時って、どうしてもこれを考える余裕がなくなってしまうんですよね。
この点、詳しく解説したいと思います。
1.事前に、成功した場合の報酬について具体的に定めておくこと
前述のような問題が発生してしまう多くの原因は、『成功した後のこと』が考えられていない部分にあります。
ある仕事を引き受けた後の報酬分配って、仲間うちではデリケートな問題なので、ついつい先延ばしにしがちですよね。
でもそこで前述のような、「ちゃんと稼げるようになろう」とか、「この会社が成功したらうんぬんかんぬん」という抽象的なセリフに置き換えてしまうと、後で泣きを見ます。
労働に関する対価なんて、人は際限なく求めますからね。
ただ事務作業をしていただけでも、スタートアップ企業が黒字化したら、「自分のおかげで会社は黒字化した。正当な対価を貰うべきだ」なんて思ってしまうんですよ。
これが、組織崩壊の第一歩です。
だから必要なことは、具体的に成功の対価を設定することです。
たとえそれが取らぬ狸の皮算用になってしまうとしても、「この事業が成功したらストックオプションで○○円で自社株が買えるようにする」や、「年収を○○円台まで引き上げる」「○○のポジションを約束する」などといった事を、事前に決めておくんです。
そこがゴールだと思って、それを理解して会社で頑張る分には、基本的には利益の争いは起きません。
『基本的には』と言ったのは、リスクとリターンの概念を理解していない一定数の人が、必ず義務以上の権利を求めてくるからです。
これははっきりと、NGを出すしかありません。
でも、最初から利益水準を定めておくと、NGを出す時にもやりやすいんですよね。
特に人数が少なかったり、仲が良かったりするほどやりにくい事ではありますが、思い切って決まりごとを作っておくのが大事です。
2.誰が抜けても大丈夫なように、社員への依存度を減らすよう運営すること
会社が成功して、一定以上の報酬が与えられると、社員は満足して、次の挑戦を求め始めます。
もしくは、与えられた報酬に満足できないと思った場合、「自分はどこにでも行けるしな」と感じて、転職してしまう事もしばしばです。
せっかく組織が形になったのに、こうも簡単に抜けられてしまうと、会社が成り立ちません。
世界各所からよりすぐりのエリートを採用してサッカーチームを作ったのに、年俸が決まった瞬間左から順番に抜けていくような状態です。
もちろん耐えられません。
そこで、利益が乗り始めてきた時、つまり仕事が形になったタイミングから、すぐに『社員への依存度を減らすように』仕事を変えていく意識が大切です。
とくにスタートアップのようなベンチャー企業では、誰がどんな仕事をしてもお咎めなしという事が多いですから、自分で自分の仕事を設計していく意識が大切です。
これは自分が社員だった場合でも重要で、「あの人が抜けたら会社が終わるな」と思ったら、それを放置せずに、すぐにその仕事を奪いに行くようにしましょう。
さもなければ、その人が転職するのと同じタイミングで、自分が転職しなければいけなくなります。
たとえその段階では転職の準備ができていなくても、です。
誰が抜けても大丈夫なように組織を運営するというのは、会社が安定するためにとても重要なことで、それをやったがために自分の立ち位置が怪しくなると怯えてはいけません。
組織からキーマンを減らして、誰でも仕事ができるように指導・教育した経験があれば、普通はけっこう良いところから採用の話があるものです。
「自分がいつ辞めても良い」状態になることと、「他人がいつ辞めても良い」状態になることは、実はイコールかもしれません。
ベンチャーまたはチームの組織崩壊を防ぐために
ということで、今回は『利益が出た会社』という視点で、組織崩壊への対策をご紹介しました。
始めのうちから意識するのは中々難しいかもしれませんが、手が空いたらやるという事を徹底していると、いつかは処理できているはずです。
人数の少ない会社では、『分かっているけど手が出せなかったところ』『緊急度が高くないから放置していた問題』という部分から中心に、大問題に発展していくんですよ。
これは本当にそうなので、ぜひ気を付けて頂きたいです。
小さな会社を改善すればするほど、「もっと早くからやっていれば良かったな」「あの時面倒臭がらずに、すぐに処理しておけば……」と思うことが沢山出てきます。
商品開発・営業・サポート・教育、すべてにおいてです。
あなたが立ち上げた会社が、うまくいくことを願っています。