ベンチャー企業に転職しようと思っているけど、ベンチャー企業にはどんなデメリットがあるんだろう。
あんまり転職で後悔したくないから、できることなら初めに知っておきたいなあ。
そんな方向け。
ベンチャー企業に所属して10年以上経過している、とあるシステム開発職です。今回は実体験からベンチャー企業転職のデメリットについて解説します。
『ベンチャー企業』と言われても、そこに所属していない人にとっては、あんまりピンと来ませんよね。
『なんだか新しい事に挑戦して、バリバリ働く』そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事で言うところのベンチャー企業は、『新しい事に挑戦する』という要素を抱えている企業だと定義していきます。
成長志向が強く、爆発的に会社の規模が大きくなる事がある反面、新しい商品・サービスがうまくいかなかった時は潔く潰れる。そんな会社です。
そう書くと、なんだか成長できそうなイメージがありますが、人が集まって仕事をする上で、避けては通れないデメリットもあります。
厳選して3つお伝えしますので、転職の参考になれば幸いです。
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ベンチャー企業に転職するデメリットを実体験から説明する
さて、いきなり本編です。
『ベンチャー企業』と一言で言っても、会社によってその性格は大きく違うので、実はひとくくりにして『コレ!』と言えるものはそう多くはありません。
それでも、名もなきベンチャー企業に所属したことで受ける可能性がある、多くの人が知らないデメリットがこちらです。
- 社長の心ひとつで社員の生き死にが決まる
- 金がない会社には余裕がない
- 『ライフワークバランス』という概念が存在しない
こういう事って、それなりに大きい会社だとあまり無い出来事です。
そのため、『ベンチャー企業独自のデメリット』と言っても差し支えないかと思い、このように書きました。
私はスタートアップを中心にやってきたので、ベンチャー企業と言っても特にスタートアップ企業に寄っています。その点はご容赦頂きたい。
成功しているベンチャー企業なら、この手の問題は解決済みかもしれません。
それでは、具体的に見ていきましょう。
ポイント①:社長の心ひとつで社員の生き死にが決まる
ベンチャー企業に所属した事がない人に言うと、「その会社ヤバくね?」と多くの人に言われる要素がこちらです。
知らない人は知りませんが、人数の少ないベンチャー企業には、想像以上にルールがありません。
たとえば社員ではなく個人事業主として契約してしまえば、支払う報酬を『従業員の最低賃金以下』にすることが可能です。
そのため、会社に貢献してくれるか分からないと判断された人は、とりあえず個人事業主契約で、会社と個人の関係を対等にするんです。
実際それで、給料を半分以下に引き下げられた方を知っています。
その人、もうIT業界を辞めてしまいましたけども。
こうした人達はボーナスを払わなくて良く、退職金を払わなくて良く、給料を下げるのも自由自在。
でも、そこで働く人達は食い扶持がないため、言われるがままに仕事をするしかありません。
まあこれはほんの一例ですが、このように一部のベンチャー企業は『ルールがない』んです。
大きな会社にいて、会社のルールに縛られるのが嫌だと考えている方も居るかもしれませんが、ルールというのは従業員を守ってくれるものです。
それがないので、社長の心ひとつで社員の生き死にが決まります。
こういう環境で生きていくのは、そう簡単なことではないです。
他にも、残業代を出す代わりに賞与を減らして相殺するとか、会社のお金が実質社長のお財布化するとか……もはや、『ルールなきルール』状態です。
もちろん、すべてのベンチャー企業がこういった、『ルールなきルール』のもとに戦っている訳ではありません。
上場している訳でもなく、どこかから投資を受けている訳でもないオーナー企業は、オーナーの御心ひとつで色々な事が捻じ曲げられてしまう可能性があるよ、という話です。
ポイント②:金がない会社には余裕がない
2つ目は、『金がない会社には余裕がない』です。
これは転職先のベンチャー企業が経営危機に陥っている時に起こります。
「そんな事が起こるのは一部のダメな会社だけだろ」と思う方も居るかもしれませんが、ベンチャー企業が創業から安定期まで、何の問題もなくずっと安泰のまま進む事って、まーぁありません。
別に利益が出ていても、経営危機に陥る事はありますからね。特に人数が少なく資金がない会社ほど、キャッシュフローの問題は深刻になるわけです。
そして、お金に困っている会社は、すべからく社員の全員に余裕がありません。
社長ではないですよ。社員全員です。
『経営危機』って、何も社長だけのものではないです。
特に30代後半から40代にもなると、転職先を探すのは結構難しくなってきます。そんな中で会社が倒産してしまうと、働き先を見つけるだけでも大変になってしまうんです。
そういった人達を筆頭に、会社のお金が無くなると、段々と周囲の空気が暗くなっていきます。
余裕が無いので、人が変わったようにギラギラする人も現れますし、常に不機嫌な人も出てきます。
もっと悪い時は、社内で責任の押し付け合いなんかに発展することも。
大きな会社で働いていると、こういった身近な倒産リスクに触れる機会はあまり無いと思うんですよ。会社の経営状況が社員のメンタルに関係してくる経験って、あまり持っていないと思うんですよね。
なので、ベンチャー企業で特に社員の人数が少ない時ほど、こういった事が起きるというデメリットを知っておくと良いかな、と思います。
出社すると毎日会社の空気がどんよりとしているのは、あまり精神衛生上よろしくないです。
ポイント③:『ライフワークバランス』という概念が存在しない
ベンチャー企業は、仕事とプライベートの区別が付かない状況に陥る事があります。
これは企業文化にもよる所なので、必ずしもベンチャー企業だけの特性ではないかもしれません。
でもスタートアップに近いほど、こうした『ライフワークバランス完全無視』のような状況になりやすいです。
それもそのはずで、まだ会社の経営が安定していない状況下では倒産リスクがすぐそばにあるため、思いついた事はなんでもすぐに実施するようにしていかないとまずいわけです。
悠長に構えている暇ってあんまりないので、スピード勝負になりがちなんですよね。
社長がバリバリ仕事をするので、それに引っ張られて社員も仕事をします。
結果、定時や残業という概念を無視して全員が仕事をしている、という事になりがちです。
『定時』とか『残業時間』とかという言葉が登場するのって、経営が安定したずっと後のことです。
その頃には社員人数が増えるので、段々と会社のルールも厳密にしていかなければならなくなりますし、労働に決まりを作っていかなければなりません。
まあでも、自分が会社を経営している立場で会社が安定していなかったら、きっと同じようにしていますからね。ここはちょっと、どうしようもないです。
明日会社が倒産するかもしれないという不安を抱えている人に、「定時なので帰ります」とはどうも言いづらい。
まだ、この段階では会社と言っても、『複数人数でビジネスを起こそうとしている』というイメージですからね。
逆に、「定時なので帰ります」を言える人はたぶん、ベンチャー企業には向いていないと思います。
ベンチャー企業に転職するデメリットを回避する方法
さて、ここまでの内容を通して『ベンチャー企業』全体がある程度持ち合わせている性格というのか、社員にとっては少し不利な面というのが見えてきたのではないかなと思います。
ここからは、こういったベンチャー企業のデメリットをどのように回避していくか。
そんなお話ができればなと。
といっても、考える事は2つくらいです。
- ベンチャー企業の『ステージ』を理解すること
- 自分の手で会社の空気をコントロールすること
それぞれ、見ていきましょう。
1.ベンチャー企業の『ステージ』を理解すること
ベンチャー企業には、設立から安定するまでの『ステージ』という考え方があります。
ベンチャーキャピタルなどの投資家が会社の状態を把握するための目安のようなものです。
- シードステージ :設立前の準備段階
- アーリーステージ:設立直後、ビジネスを構築する段階
- ミドルステージ :顧客が付き、成長している段階
- レイターステージ:組織が確立し、仕事が安定してくる段階
個人的には、こんな風にスラスラ行く企業なんて全体から見るとほんの一部だと考えています。
ミドルステージに乗っかった後でも、より大きな資金を持っている会社が競合になって、一瞬で顧客をさらわれて終了という事はザラにありますし、『レイターステージ』に上がれるのは、本当に一部の企業だけです。
まあそれはさて置いて、これからベンチャー企業に転職するという立場で見てみると、どこから会社に所属するのかによって、自分がやるべき仕事の内容がかなり変わってきます。
『ベンチャー企業』とひとくくりに言っても、スタートアップの場合はステージによって差が出るという事をまずは理解しておくべきです。
なお、この『レイターステージ』を乗り越えた後のベンチャー企業は比較的安定しているので、転職難易度が上がる代わりに仕事もベンチャーっぽさが無くなっている可能性が高い事は、知っておくと良いと思います。
中には会社がどれだけ大きくなってもベンチャーらしさを忘れない、『メガベンチャー』と呼ばれるような会社もあるので、そういった会社でいいとこ取りをする手段もありますね。
ともあれ、もし経営危機やワンマン社長のような会社の性格をできるだけ回避しようと思ったら、この『ミドルステージ』以降の企業をターゲットに転職先を選ぶのが正解です。
ベンチャー企業らしいカオスさはこの段階では結構薄れていますので、比較的マイルドな味になっています。
ただし、もうこの段階では爆発的な昇進は目指し辛いです。
リスクとリターンはイコールということですね。
「いや、俺はベンチャー企業らしい挑戦をして、自分を高めたいんだ」と思う方は、ぜひ自分のビジネスアイデアを持って、シードの段階から関わっていく事をおすすめします。
昼も夜もなく仕事をする可能性はありますが、確実に自分の意識は向上しますよ。
2.自分の手で会社の空気をコントロールすること
ベンチャー企業の、とくに少数精鋭の企業でやっていこうと思ったら、「自分はヒラの社員だから」といったような遠慮は好ましくありません。
むしろ、自分の手で会社を変えていくつもりで関わった方が、会社にとっても自分にとっても良いことです。
たとえば、給料が社長の一存で決まる可能性があるなら、社長の信頼を勝ち取れば、安定した収入のもと仕事をする事が可能になります。
会社が経営危機に陥っているなら、自分の手で仕事を取っていく事を考えれば良いですし、ライフワークバランスは自分が率先して仕事を完了させ、周囲に働きかければ改善される可能性が高いです。
このように、10~20人程度なら、自分が会社の中心として立つ事も可能だということを、忘れてはいけません。
振り回される側ではなく、振り回す側に立ってしまおうという訳です。
これは転職したばかりの人間にとって、そう簡単な事ではありません。メンバーの信頼を掴むまでは、たとえ何歳であっても下働きのように扱われる事を覚悟しなければなりませんし、成果も出さなければなりません。
でも、それを達成した時の自由度は、大きな会社に勤めていたら決して実現できないものです。
ベンチャー企業ってデメリットが沢山あるのですが、会社が小さい分こういった作戦があるので、デメリットを上回って有り余るメリットにもなると、私は考えています。
始めは苦しいけれど、次第に楽になっていく。そういうものです。
ベンチャー企業に転職するデメリットとは
ここまでベンチャー企業に転職することのデメリットとして書いてきましたが、人によってはデメリットにはならない事かもしれないなあ、と思っています。
確かに、どうにもならない事はあります。ルールがめちゃくちゃだったりすると、困ることも多いです。
でも、もし仮にそうだったとしても、受け身の姿勢でなければ、そのベンチャー企業で培った知識や経験を活かして、会社を立ち上げてしまう作戦も取れます。
「一人だけでも生きていく」という意識が付く事もあります。
終身雇用もほぼ無くなったと言われる昨今、個人個人が生きていく術を身につけなければ、たとえどこに勤めていたとしても、どこかで困る事になる可能性はあるんですよね。
それを考えると、今のうちから小さな枠の中で、どのような社会の変化にも対応できるだけのスキルを身につける必要があるかもしれませんね。
ということで、現場からは以上です。