ベンチャー企業って、すごく楽しそうだなー。
会社のルールも多くないんでしょ? 働きやすそう。成長できる?
でもリスクがありそうだし、そのあたりを教えてほしい。
今回は、わりと初心者向けの内容です。そんな疑問に答えていきます。
「ベンチャー企業の仕事はやりがいがある!」なんて、見ることもありますよね。
ベンチャーに良いイメージが増えてくると、「ベンチャーって楽しそう」と思う事も多いのではないでしょうか。
私はそんなベンチャー企業に10年以上いるので、実際の所をお話したいと思います。
学生で、まだ社会人経験のない方に向けて書いていきますので、既に現在社会人という方には、あまり有用でない知識もあるかと思います。予めご了承ください。
それでは、さっそく本編に進みましょう。
Contents
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「ベンチャーって楽しそうだな」←本当?
まず第一に大切なことは、物事には必ず表と裏の側面があるということです。
『ベンチャー企業』というのは、多様化していく企業の中で、とても抽象化された単語です。要するに、『日本人』みたいなものだと思って頂きたいのです。
だからこそ、『ベンチャー企業だからここに入る』という事ではなくて、『この会社が良いからここに入る』という理由を持つことが大事です。
それも踏まえた上で、ベンチャーの楽しい所って、こんな感じです。
- 意思決定が早く、すぐ動ける ← 人数が少ないから
- ルールがなく、自由に働ける ← 歴史が短いから
- ひとりが任される範囲が広い ← 規模が小さいから
これが、『物事には必ず表と裏がある』と言ったことの本質です。
『仕事にやりがいがある』という内容を分解すると、多くは上記のような意見からなるものですが、あるひとつの側面があるということは、必ずその反対側もあります。
その上で、ベンチャーで働くのが楽しいかどうか。それを判断するのは、自分です。
意思決定が早く、すぐ動ける
意思決定が早くすぐ動けるのは、人数の少ない会社に見られる特徴です。
これはベンチャー企業だからと言うより、社員数が少ない事によってコミュニケーションコストが減るという要素の方が強いです。
ベンチャーだから何でも即断即決という訳ではありません。
先が見えていない、調査と検討をしなければならない課題の時に、ろくに調べもせず判断をする会社は、あまり長続きしそうにありませんよね。
鯛焼き屋さんで、あずきが良いかカスタードが良いか迷っている客に対して、答える前に問答無用であずきを突き付ける店主みたいな感じです。
この店は、間違いなく反感を買うでしょう。
大企業だからだらだらと判断を先送りにしている訳ではなくて、関わる人の数が多いから、情報を伝達させるのに時間がかかっているんです。
ここの理解をしておかないと、『ベンチャー企業は意思決定が早いから仕事も早い』という、ちょっと誤解した解釈をすることになってしまいます。
逆の側面を言うと、関わる人数が少ないばかりに情報を持っている人の数も少なく、良いアイデアが出にくいという事もあります。
これは冒頭でお話した通り、表と裏の関係です。
ルールがなく、自由に働ける
ルールがなく自由に働けるというのは、会社の歴史が短い場合に起こりがちな特徴です。
誰でも、『ルールに縛られるのは嫌だ、ストレスがかかる』という考えを、少しは持っています。だからこういった考えが出てくるのだと私は認識しています。
正確に言うと、『自分が決めたルール』は良くて、『他人が決めたルール』に従いたくないという気持ちの方が、強い事が多いんですけどね。
それはさておき、ルールがないから自由に働けるというのは、若干の誤解を伴っています。
会社のルールは、基本的には統治者がより環境を統治しやすくなるように作ります。
たとえば、Aさんは1年の間に1日も休まないけれど、Bさんは20日休む、ということがあります。
これでは評価ができないので、労働時間に対する賃金というルールが生まれます。
だからといって、働きっぱなしの人が儲かるという形にしてしまうと、ワーク・ライフ・バランスが取れず、労働者がいっさい休めなくなってしまうので、有給制度が生まれます。
これって、AさんとBさんの違いを吸収して、同じ労働者として立場を守るために存在しているものですよね。
だから、『会社のルールが少ない状態』というのは、逆に言えば『不公平がまかりとおる状態』である、とも言い換える事ができるんですよ。
個人が個人の好き勝手に物事を決められる世界は、むしろ自由からは遠ざかっていきます。
もしも、国の法律が一切無かったらどうなるでしょうか。
窃盗はし放題、詐欺は働き放題となると、弱肉強食の強い人間が上に立ちます。弱者には生きる権利さえ与えられません。
そうすると、最後にルールを決められる最も立場の高い人間、ここで言うと『社長』が、悪い人間だったらもう終了です。
歴史の短い会社は、こういった『働きやすい環境』が作れるかどうか、という重要なポイントが、権力者に一任される環境だという事を理解するべきです。
ひとが働くために快適なルールが設けられている会社が、会社員にとって良い会社です。
『ルールがない』『ルールが少ない』という状態は、むしろ我々弱者にとって不利に働くものだと理解しましょう。
ひとりが任される範囲が広い
ひとりが任される範囲が広いというのは、規模の小さな事業を営んでいる会社によく見られる現象です。
事業規模が小さいと、資金を稼げる範囲は必ず狭くなっていきます。
平均的には、やはり事業規模が大きい方が、より多くのお金を稼ぐ事ができ、従って従業員数も増やせるのです。
ベンチャーはこれの逆を行く状況になっている事が多いですから、つまり少数精鋭で仕事を行う事になり、それは結果として、とても広い範囲の仕事を受け持つ事になるのです。
それは勿論、ベンチャーに就職する上で、貴重な体験のひとつとして挙げられるでしょう。
しかし、だからといって大企業よりも優れているかと言われれば、なんとも言えない関係にあります。
大きな規模の事業で、関わる人間も多いとなれば、そこには必ず『大人数で仕事を裁くチームワーク』が必要です。
これは前項の『ルールがない』にも関わってくるのですが、従業員数300人以下という状況が多いベンチャー企業では、絶対に1,000人という大人数を組織する経験は積めませんよね。
だからこれも、個人的にどちらをより重視するか、でしかないんですよ。
その代わり、営業でもないのに見積書を作ったり、自分の作業環境を自分で用意することになったり……職務の領域を飛び越えた、ハンドメイドとも言える世界が待っています。
考え方次第という所はありますが、会社で行われている仕事の全体像を、作業手順まで明確にイメージするというのは、事業規模が小さくなければ中々できないことです。
ちなみに私は、このあたりに魅力を感じてベンチャー企業で働いております。
ベンチャーの楽しさと厳しさ
さて、こんな側面を持っているのがベンチャーなわけですが、今回は『ベンチャーって楽しいの?』というテーマですから、実体験に基づくところでお話ができればと考えています。
まったく個人的な主観でお話すると、『ベンチャーだから仕事が楽とかきついとか』『ベンチャーだからリスクがあるとかないとか』そういうことはないです。
仕事は総じてきついです!
ただ、『ベンチャーだからやりがいがあるとかないとか』ではないのですが、仕事にはやりがいがあります。
会社によるのは間違いないですが、少なくとも「ベンチャー企業なんて全部、夢見せるような言葉ばっかり並べて、その現実は飛び込み営業か激務の作業でしょ」という事はありません。
会社によります。
これって、「日本人はみんな暗くて眼鏡かけてる」みたいな感じです。
そんな中、私はベンチャーだからこそ楽しめる要素が、こんな所にあると考えております。
自分の手で、あらゆる仕事を効率化できる
一度フローが見えた仕事を、その手順のまま次に持ち込むという事は、基本的にしません。
同じ作業量だと分かっているものを、そのままの作業量で始めてしまうと、人数が少ないので仕事が増えればショートするからです。
そこで、『あらゆる仕事を効率化する』という考え方が生まれます。
たとえば少年漫画で、最初の修行シーンはすごく丁寧に描かれていたけれど、次の修行シーンをそのまま見せると退屈になってしまう、みたいな感じです。
できる所はお金を使ってでもどんどん作業時間を短縮させますし、自分でシステムを開発して、作業時間を縮めることもあります。
この、『ある日お金が必要になったので使う』という手順は、社員数が多くてコミュニケーションコストがかかると、途端に大変になります。
控えめに言っても、100m走とリレーくらいの違いがあります。
だからベンチャーは比較的、作業を効率化させやすいと言えるし、思いついた事をその場で実行していける可能性も高いんです。
もちろんベンチャー企業だから100%そうだという訳ではなく、ある程度は会社の性格によります。
でも、今まで1週間かかっていた仕事が、効率化することで1時間になった時などは、わりと感動できます。
これぞやりがいです。
やっている仕事が、日単位でどんどん変わっていく
あなたは、『毎日が同じ作業の繰り返し』であることに、ストレスを感じるでしょうか。
私は、同じ作業が3日も続くとストレスを感じます。
何かシステム開発をしていれば良いんですが、『進捗に達成感を得られない作業』を続けるというのが、苦痛に感じてしまうんですよね。
そういった私のような方は、どちらかと言えば社員数の少ない会社で、広い範囲の仕事を受け持った方が幸せになれるかもしれません。
ベンチャーは事業規模が狭いので、様々な仕事の範囲を任されることがある、とお話しました。
これを片付ける順番は自分で決めて良いので、優先順位と期限さえしっかりと守れば、「今日は気分が乗らないからこっちの作業をやろう」「システム開発はまとまって集中する時間が必要だから、今日のところは資料を作ろう」と選ぶことができるんですよ。
自分の仕事は自分で決めていい。これはかなり大きいです。
そうすると、『仕事はしているんだけどモノは形にならなかった期間』というのが、どんどん短くなっていきます。
ちょっとした隙間時間を有効活用して、小さな仕事は小さな時間で終わらせる。
こういう所に、融通が効くんですよね。
やがて、それが最大限に効率化されると、やっている仕事が日単位でどんどん変わっていき、猛烈なスピードで仕事がこなされていくビジネスマシーンになることができます。
作業に対するストレスが少ないので、仕事のペースが速くなるんですよ。
ただし、最終的には『要所を分業する』方が、効率が良くなる事はお話しておきます。
ここで言う仕事とは、まだフロー化されていない、開拓するタイプの仕事のことです。
仕事が楽しいと思えれば、ベンチャーだって楽しい
ベンチャーに関する楽しさの記事を書こうと思ったのですが、なんだか最後は仕事が楽しいという記事になってしまったような気がします。申し訳ありません。
でも、仕事は実際、楽しいです。
嫌々仕事をすることになってしまうのは、仕事の本質的な楽しさを見つけられていないからか、環境が悪いからだと確信しています。
勉強と一緒なんですよ。人からやらされる勉強は死ぬほどつまらないですけど、自分でやろうと思う勉強って、すごく面白いですよね。
それと同じで、自分でやろうと思う仕事は、とても楽しいです。
もし、今やっている仕事がつまらないと感じていて、それで「ベンチャーって楽しいのかな」と考えている方が居たとしたら、自分で仕事を企画して行動することの楽しさを、まず実感してみて頂けたらと思います。
なんでも良いんです。もしそれが楽しいと思えたら、それから自分に合った会社をベンチャーでもなんでも、探してみたら良いじゃないですか。
なぜなら、『ベンチャー企業だから楽しい』わけではなく、『自分に合った会社だから楽しい』からです。
会社の仕事を楽しいと思うためには、まず自分が仕事をする事が楽しいと思えるようになること。
そこが第一歩だと、私は考えています。